中年男子が佐賀県全20市町をぶらぶら歩く連載の6回目は白石町を歩く。
ルールは
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- 公共交通機関で現地まで移動
- 歩く距離はだいたい5km
- 2021年3月末までに全20市町を散歩する
- 美味しいものをきちんと紹介する
- お酒はほどほどなら大丈夫!
- 基本はぶっつけ本番。面白いものに当たるまで歩くべし
- 旬の風景を探そう
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白石町に行くなら肥前竜王駅は外せない。ドラクエ世代にとって”りゅうおう”は避けては通れないのだ。今回は肥前白石駅から肥前竜王駅を”攻略”する。
まずは肥前白石駅。駅の横には「りんりん公園」があり、こけしのような石のモニュメントが2つ並んでいる。片方の胴体には町章が貼られており、もう片方には「歌垣 あられふる 杵島が岳を 峻しみと 草とりかねて 妹が手をとる」という歌が刻まれている。後日ネットで調べたところ、
愛する男女が駆け落ちをして杵島山へと逃避行したが、山があまりにも険しかったので、草にしがみつこうとしたが彼女の手を取ってしまったというものであり、男が周りの女性たちを歌に誘い込むための誘い歌(笑わせ歌)であったと思われる。國學院大学デジタルミュージアムから引用
との記載があった。2体の間は金属製のバーで繋がれている。結構シュールだ。
とりあえず肥前竜王駅方向に向かう。県道36号沿いを数分歩くと、精肉店の看板が眼に入った。南北に長そうな商店街のようだ。車移動だと見逃してしまう佇まい。陶器屋さんや定食屋さんがある。平日の午前中なのに人通りもそこそこ。1ブロック行ったところに魅力的な手描き看板を発見!!
「おいしい うおかつ」 どんなカツなんだろう? 店内に入ってみる。店の中心にはお母さんが座っていて、お客さんとお話していた。その横には惣菜各種。魚フライやきんぴらゴボウなど美味しそう。「うおかつ」が魚のカツであるなら、それらしきものはあるのだが、どれかは断定できない。お母さんに聞いてみる。
「『うおかつ』ってどれですか?」
「ここの惣菜全部ですよ」
「えっ、うおかつってカツがあるんじゃないんですか?」
「カツの名前? いや、この惣菜は『うおかつ』さんが作っているのを置いてるの」
「うおかつ」は商品名ではなく店名だったのか! なかなかの勘違いだ。冷静に考えれば、「カツ=肉のフライ」なので、魚のカツなど存在する訳がない…。せっかくなので、お母さんおすすめのハムポテフライを1つ購入。丸っとした形が熟練の技を感じさせる。しかもすごくリーズナブル。
歴史ある商店街のようで、存在感のある面構えのお店が多い。それを眺めるだけで楽しい。ぶらぶらと歩いているとある看板が眼に飛び込んできた。「魚勝」!!
このお店のことだったのか。中に入るとお惣菜のワンダーランド!!!!! 店内はたくさんのお客さんがいて、会計待ちの列ができている。その最後尾に並びながら何を買うか思案。煮物系に惹かれるが持ち歩きに問題がありそうなので泣く泣く断念。フライ系に集中。コロッケや唐揚げも捨てがたいが、やはり鮮魚店なので魚系をチョイス。あまり聞いたことがないカマスフライとキビナの唐揚げに決めた。さあ昼ごはんの主役が決まった。続いて通りをちょっと行ったところにあった酒屋さんでビールを購入。あとは至福の時をどこで過ごすかだ。このまま南下すれば肥前竜王駅に行けるのだが、商店街を抜けると食事できる場所は少なそうな気がする。加えてルールにある
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- 旬の風景を探そう
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が難問。このまま市街地を歩いても出会う可能性は低いかも。こういうときはインスタだ。#歩こう佐賀県 で検索すると「縫ノ池」というスポットが出てきた。池の汀に大きな樹があり、季節感がありそう。場所は杵島山の山裾あたり。結構遠回りになるけど、行ってみるか!
長崎本線を跨いで杵島山方向へ。ここからは大体の方向を見ながらドラクエウォークに導かれるまま田園地帯を進む。
歩くと分かるのが、ここで作られている作物の多彩さと働く人の多さ。どの畑にも人がいて、せっせと手入れをしている。車で通り過ぎると見過ごしてしまいがちだが、そういう営みが私達の生活を支えてくれている。
レアなモンスターを探すという寄道をしながら1時間くらい。だいぶん山裾に近づくと、土蔵造りの民家が並ぶ通りが現れた。
通りを右に折れると、生垣がきれいな集落が。ということは城下町なのか?
さらに進むと「須古寿し」の看板が。せっかくなので食べてみたいのだが、どうもお店をやっている雰囲気がない。入口付近でまごまごしていたら、散歩中の地元のお母さんが声をかけてくれ、お店?の方に取り次いでくれた。店頭販売はなく、町内のスーパーなどで売っているという。残念だが仕方ない。
なんとなくお母さんと一緒に歩く。この辺りは須古という地区で、昔は須古城があり、龍造寺家が支配していたという話を聞く。龍造寺の城ということはリアル「竜王城」じゃん! ということで、お城まで案内してもらう。小学校の前にある立派な石垣で立ち止まるお母さん。「昔は背の高さくらいあったけど道路の嵩上げでこんなに低くなった」と話す。校庭の先は小高い丘になっていて赤いのぼりがたなびいている。そこが目指す「りゅうおうじょう」とのこと。お母さんにお礼を言って別れる。
せっかくなのでドラクエウォークのイベント目的地を「須古城跡」に設定。いざ攻略開始!!
いきなりの急坂をなんとか登りきり、赤いのぼりがある方面への道と、「主郭」と書かれた案内がある道との分岐点に。とりあえず「主郭」を目指す。井戸跡などの遺構を見ながら外周を巡る。小学校側のほぼ反対まで行ったところで登り口の案内。ゴツゴツの岩が重なる崖。しかも群集した竹の一部が倒れてさらに分かりづらい。登れるような道はどこ? よーく眼を凝らすと竹でできた手すりが設置されている。これを伝っていけば良いのか!! 城なんでハイキング気分で登れると問題があるわけだが、地元の人たちであろう、整備してくれた人のおかげでこんな思いつきの散歩が気軽に楽しめるのだ。感謝。
急斜面を登ると主郭に到着。謎の石積みがドーンとある。ここでドラクエウォークのイベントもクリア。縁に行くと佐賀平野が見渡せた。ここでランチでも良いのだが、先ほどの赤いのぼりの場所の方が眺めは良さそうなので、そちらに向かう。
下りは舗装された道があってスムーズ。というか、こっちから登れば楽だったのに…。まあお城攻略感はあったので良しとしよう。先ほどの分岐地点に戻り、のぼりの方へ。細い道の小学校側は絶壁。反対側は空堀になっている。これはなかなかの名城だな。「須古城」と書かれた赤いのぼりは、物見台的な場所に立っていた。佐賀平野が一望。これなら遠くにいる敵の姿も丸わかり。やはり名城。
さて昼餉にするとしよう。ベンチに座ってビールをごくり。疲れた体に沁みる。そして魚勝のフライ。「勝」って漢字が良いな。カマスフライは上品な味わい。丸まった姿が愛おしい。そしてキビナの唐揚げが最高!! 甘めの衣が、キビナの苦味とベストマッチ。さらにビールを注ぎ込めば、最高の昼間酒!!! まさに戦国武将気分。
充分に英気を養ったところで、城を下りる。目指す縫ノ池はさらに南だ。山際に沿って進む。時々、須古城方面を振り返る。改めて見ると、佐賀平野に浮かぶ島のような立地だ。しばらくすると「縫ノ池入口」という案内板が現れ、高い木が見えてくる。途中、お寺の良い石段があったが今回も断念。さらに行くと池が現れる。
水面に映る冬枯れのメタセコイア。まさに季節を映す景色だ。取り急ぎ撮影。ここは「縫殿池弁財天」と言われ、ここにある神社は「厳島神社」。広島の宮島と同じく平清盛と関係があるそうで、この辺りは平安末期に平家の領地だったらしい。佐賀平野の西の中心地だったということか。
メタセコイアに近づく。こんこんと水が湧き出していた。顔を洗うと気持ち良い。「金妙水」とよばれる名水なのだが、昭和30年の初めから、飲料水や農業用水を確保するために地下水を過剰に汲み上げたため、40年間にわたり湧き水が止まっていたという。地下水汲み上げをなくしたことで復活。現在のような美しい景観を取り戻した。「インスタ映え」スポットは偶然できたのではなく、地元の人たちを中心にした努力によって守られていることを実感した。
さあミッションコンプリートということで、あとは肥前竜王駅を目指すのみ。歩きながらずっと気になっていたのは民家の入口にある謎の機械。
なにかの通信機のようだが、これはなんだろう? 知っている方がいたら インスタアカウント burabura_saga まで連絡を!!
ひたすら農村地帯を歩くこと30分。川べりに歩道があった。車止めが岡本太郎チックな味わい。なかなか味わい深い。ここで時間を確認。肥前竜王駅発の列車まで残り20分ほど。グーグルマップで調べると、ここから23分ほど掛かると出た。この列車を逃すと大分待たなくてはいけない。ここまで結構歩いてきたが、最後の力を振り絞って速歩きに務める。黙々と進むこと10分、長崎本線が見えてきた。線路の下をくぐったところで、予定時間と残り時間が一致。なんとかなりそうだ!!
国道207号線に出て、ほぼ駆け足で駅に向かう。駅前に到着したところで残り3分。ロータリーには餅つきをする彫像があった。題材もさることながら、リアリアズムな表現がシュール。感心している場合ではない。駅舎へ急ぐ。なんとか間に合った。到着後 数分で列車到着。まじで危なかった。HPとMPギリギリでクエストクリア!!
本日の散歩は17760歩。約13kmの行程でした。最後本当にしんどかった…。ちなみに肥前竜王駅の名称は旧地名「竜王村」に由来しており、元々は「龍王崎」という地名から来ているとのこと。同地には「龍王崎古今の森公園」があり、約20基の古墳があるという。また、全国には「竜王駅」がもうひとつ山梨県甲斐市にあるそうです。いつかそこにも行ってみたい。
【おまけ】いい感じののらフォント↓
▼取材終了後、筆者と担当Mさんとの会話
担当M「ドラクエやっていない人にとってはよく分からないんじゃないんでしょうか?」
筆者「えっ、そう言われると…」
担当M「まあ、ドラクエだけという訳ではないですし、街歩きが面白そうなのでいいんですけどね」
筆者「商店街とか良い雰囲気でした! 魚勝さんにはまた行きたいですっ」
担当M「結局、なぜ『竜王』という名前になったか分からなかったですね。せっかくなので龍王崎まで行っても良かったのでは」
筆者「…列車の時間もあったし、駅から結構距離もあったので、ちょっと今回は無理かと。タイミングを見て追加取材してみます」
担当M「まだまだ行っていない市町もあるので、そちらが終わったら是非お願いします」
次回も乞うご期待!?