2021.03.03 UP

中年男子が佐賀県全20市町をぶらぶら歩く連載の11回目は基山町を歩く。本連載最長の約14km歩いた第9回鳥栖編からノンストップで基山町の長崎街道を北上し県境を目指す。

ルールは

      • 公共交通機関で現地まで移動
      •  歩く距離はだいたい5km
      • 2021年3月末までに全20市町を散歩する
      • 美味しいものをきちんと紹介する
      • お酒はほどほどなら大丈夫!
      • 基本はぶっつけ本番。面白いものに当たるまで歩くべし
      • 旬の風景を探そう

 

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多分この辺りが町境のはずだけど…。表示も何もないな、と思っていたら庭先で野菜の手入れをするおばあさんがいた。

「ここは基山町ですか」と尋ねたところ、手を止めて「そうですよ。3軒手前から基山です」と教えてくれた。

 

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基山町では手作り案内板が長崎街道を教えてくれる。郷土愛が伝わる。町の花はつつじ、とのこと。鳥栖に続き、新しい街と古い街が交互に現れる。

 

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川沿いの白いポールに「源氏ほたる発祥の地」と書いてあった。後日調べたところ、大正10年(1921)に九州帝国大学医学部が、この川に源氏ほたる養殖場を設置したとのこと。目的は病原駆除や発光細菌の研究素材としてだったらしい。生き物に関することを「発祥」というのは違和感を覚えるが、こんなところにも歴史が埋まっているんだと思うと感慨深い。

「リバー橋」。…まあ問題があるわけでないが何かムズムズする。リバーの範囲が広すぎて特定できない。これじゃ名前にならないのではないか。普通はその川の名前だったり、地区の名前だったり、他と区別できるようなものにするはず。だが「リバー橋」。ざっくりネット検索したが「リバー橋」は出てこなかった。じゃあこれで特定できるということか…。みんなが知っている言葉の組み合わせで、他にはない。「名前」の機能としては最高のものとなる。狙ってやっているとたらすごいぞ基山町民!!

 

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川沿いを歩いていくと、屋根の高い建物があった。ちょっと覗いてみたら、日本酒・基峰鶴の酒蔵だった。事務所は年代物の椅子やレジが展示されていて、歴史を感じる。小さな瓶の清酒などを購入。スタッフの人に基山ラジウム温泉を教えてもらう。基山に温泉があるとは!! 食事もできるらしいので、県境に到達したらそこを目指そう。外には砂漆喰みたいな質感の防火用水。これも良い雰囲気だった。入口にはバンクシー風の鶴のイラストもあり、伝統を大事にしながら、新しいものに挑戦する意識を感じた。

 

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建物の裏には「清酒キホウツル」のロゴが印象的な建物があった。土手に咲いた菜の花が美しい。その側には

 

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「この公園あの道路みんなの税でできている」という標語?が書かれたポールがあった。先ほどの「源氏ほたる発祥の地」のものと同じようなスタイル。鳥栖で何個か見たことあったが、他の町にはないと思う。県東部独自のものなのか?

 

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だんだん建物が密集してくる。道は自然なカーブを描く。店頭の飾り窓の装飾が時代を感じさせる。丁寧な仕事だ。いつの間にか基山駅前に。

 

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古民家をうまくリノベーションしたお店があった。インディゴの暖簾や半纏がカッコイイ。手描きのカレー看板に興味をそそられる。

昔の小学校の木造校舎のような建物が現れた。製薬会社の社屋のようだ。江戸時代、ここは田代宿と同じく対馬藩の領地で「日本四大売薬」のひとつとされてきた。長崎街道を中心に、交通の利便性が良いことが理由らしい。

 

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踏切を渡ると「関屋土塁」の説明板があった。同土塁は663年、朝鮮半島であった白村江の戦いに日本が参戦し敗北した後、大宰府を中心とした一帯を守るために作られた大きな構造物。丘と丘の間を土を固めてつないでいた。現在でも長さ20m、高さ4.8m、段の幅15mほどが現存しているという。1300年前から国際情勢に直結している歴史ある場所を歩いている。

 

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長崎街道は国道3号線と鹿児島本線に挟まれたゾーンを走る。狭い場所なのに手入れが行き届いた畑。列車が数分おきに交差する中、男性が黙々と作業していた。

 

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再び線路をまたぐ。街道は静かな住宅地に入る。屋根を支える「垂木」とよばれる木組が2段ある民家。神社仏閣にはあるが、家ではなかなか見ない形式だ。

釉薬瓦の家。家だけでなく、塀の屋根も赤い。同じ瓦は中国地方で主に使われている。九州では降雪の多い日本海沿岸や山間部にしかない。

 

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道が上りにかかるところで大きな石があった。字がちょっと読みにくいなぁと思っていたら、向かいの民家で世間話をするおじさんがいたので聞いてみた。「猿田彦大神」と書いているという。「坂本龍馬もシーボルトもここを通ったんだよ」とおじさん。

坂を上がってすぐ下る。ここまで導いてくれた基肄(きい)かたろう会さんの長崎街道案内板に「行き止まり」の文字。けやき台駅を中心に大規模に開発されているようで、旧道が途切れているようだ。とりあえず三国境石を目指す。

 

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けやき台駅の歩道橋を下りて、国道3号線を歩く。

 

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国道3号線は長崎本線と並走しながら、九州道と交差する。現代でも交通の要衝だ。先に行くと1954年創業のハンバーグ屋さん。車で走るたびに気になっていたのだが、今回も時間の都合で立ち寄れない。ここは再挑戦したい。すぐそこに基山SAの高速バスのりばがある。高速バスで帰るのもありかと思ったが、ルール上もうちょっと歩かないといけないかな。後ろ髪を引かれながらさらに先へ。

 

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歩道のわきに小さな公園があり、石の標柱が3組置いてあった。それぞれ「肥前国対州領」と「筑前国」と刻まれた石柱1本ずつが背中合わせに置かれている。あれっ? 「三国境石」なのに二国分しかない。もうひとつ「筑後国」もあるはずだが、どこにもない。まぁここが県境であることは間違いないので、次の目的地・基山ラジウム温泉を目指す。

後日、調べたところ、今回確認した石柱は三国境石ではなく「二国境石」。しかも国道拡張により移設されたものだという。「三国境石」は長崎街道のもう少し先に現存しているという。もうちょっと歩けばよかった。

 

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国道3号線の下り側歩道を歩く。流れる川を眺めつつ、小道に入ったら自動車学校があった。さすがに足が張ってきた。砂利道の感触が優しい。

 

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国道から曲がり住宅街へ。ここにも標語ポール。「あかるい子供で  パッと花咲く 本桜」とある。本桜? 一本桜の「一」が消えたのかな、と思い確認してみたが、そんな感じはなかった。しばらく歩いて見かけた掲示板で疑問解消。ここの地区名が「本桜」だったのだ。教育熱心らしく標語ポールをたくさん見かけた。

 

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切り通しの坂を下る。左手に九州道。農地がちらほら現れる。無人販売所を物色していると、帰宅途中らしき女性が土筆を積んでいた。「もう大分育ってしまっているのが多いけど、よく見るとまだ大丈夫なものがありますよ」。お浸しにして食べるそうだ。気がつけば、そろそろ夕暮れ。坂の先に夕日が落ちつつあった。

 

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そろそろ目的地のハズなんだけど…。さ迷って古い集落へ。煉瓦壁やモルタルブロックの小屋、ゆるやかに曲がる道。推水路にはぞんざいに木が渡してあった。

 

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大きなお堂が見えたら、そこが目的地・基山ラジウム温泉だった。さっそく中に入る。柔らかな光に包まれ、ゆったりとした空気が流れる。

 

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サンルーム的な雰囲気のお風呂。開放的で居心地抜群。源泉は冷泉のようで、そのまま張った水風呂と沸かした熱い浴槽の2種類があった。常連さんの振る舞いを真似て交互に入る。サンルームの緑が茂ったコーナーを見ていると、女湯との境に石像が置いてある。気にしつつ近づくと弘法大師さまだった。さすがお寺の温泉。入念に足をもみつつ、お湯を堪能した。

 

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すっかりリフレッシュした後は併設された食事処へ。居酒屋としても営業しているようだ。迷わず生ビールを頼む。いやー最高です。

 

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つまみはおすすめメニューから「佐賀牛中落ち炒め」を選ぶ。野生味あふれる味わいに体が喜んでます。マグロの中落ちは聞いたことあるけど、牛にもあるのか。魚と同じように骨の周りの肉なのだろうか。赤身っぽくてよかった。帰り際、受付のスタッフさんに聞いたが、ここの源泉でコーヒーやお茶を入れると美味しくなるそうだ。じゃ焼酎を割っても? 「そりゃ美味しいですよ!」。…やはり再挑戦だな。

 

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佐賀県内唯一の私鉄 (三セク含まず) である甘木鉄道立野駅 が近くにあるとのことなので、そこから帰ろう。付近は工場が多い。工場の裏にある細い道を辿っていくと、九州道が近づいてきた。

駅のホームは、なんと高速の下!! アンダーパスの中に道路と鉄道が通っている。これはかなり珍しい。会社終わりの人たちがぽつぽつと集まってくる。

 

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しばらく待って、やってきた列車に乗車。約3分で基山駅に到着。トイレに寄って列車を1本乗り過ごすが、後続の快速で鳥栖駅で予定していた列車に追いつく。なんだか都会のようなリカバリー。本数が多い鹿児島本線ならではの展開だ。

 

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鳥栖駅で待っている間に、56番ホームの売店で焼売(しゃおまいと読むらしい)を買う。本当は車内で食べたいが、家まで持ち帰ることに。

基山編は9843歩。約7kmの旅だった。 鳥栖編と合わせた1日合計は約22km!!!!! 長崎街道恐るべし。昔の人はこのくらいの距離平気で歩いていたんだろうなぁ。

 

▼取材終了後、筆者と担当Mさんとの会話
担当M「ようやく予定の半分超えましたね」
筆者「今回はちょっと歩き過ぎましたが、1日2回取材する要領も分かってきました」
担当M「でもあと1カ月ですよ。コロナがあったからって4月以降に延期できませんからね」
筆者「えっ…。まあ最初からそういうルールなんで、週2ペースで行けば大丈夫だと思います!!」

 次回も乞うご期待!?

 

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