中年男子が佐賀県全20市町をぶらぶら歩く連載の12回目は小城市を歩く。
ルールは
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- 公共交通機関で現地まで移動
- 歩く距離はだいたい5km
- 2021年3月末までに全20市町を散歩する
- 美味しいものをきちんと紹介する
- お酒はほどほどなら大丈夫!
- 基本はぶっつけ本番。面白いものに当たるまで歩くべし
- 旬の風景を探そう
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早朝の小城駅に到着。ちなみに小城駅の住所は三日月町久米。合併する前は三日月町にあったことになる。
クラシカルな駅舎。駅名の揮毫は同地出身の「明治の三筆」中林梧竹。駅前にはいろんなモニュメントがある。与謝野晶子の夫・寛(号は鉄幹)の歌碑があった。これまた同地出身の経済学者・高田保馬との縁で訪れたらしい。門司の港で小城のことを詠むなんて、よほど良い思い出を作ったのだろう。
脱線するが、小城駅といえば世界遺産・厳島神社の有名な海中鳥居である。昭和26年、現佐賀市大和町にあった推定樹齢2000年の大楠を小城駅経由で広島の宮島まで運び、鳥居の主柱にしたという。佐賀市図書館大和館のパネル展示で見たのだが、どこに生えてのか、いつか確かめたい。
今回はまずバスで、最近復活した話題の酒蔵へ行き、そこから小城駅までぶらぶら戻るというプラン。まずは駅前のバス停で待つ。が、予定の時間になっても来ない。おかしいな、と思い時刻表を見ると、乗るつもりの便は通っていないことが分かる。調べたところ、ここから10分ほど北の国道203号沿いのバス停が最寄りのようだ。
通りをぶらぶらしているうちにトイレがしたくなる。バス停の前に市民交流プラザ「ゆめぷらっと小城」があった。午前8時半から開館していて助かった。
落ち着いたところで、昭和バスのりばへ。かなり味わい深い待合室だ。そんなに待たずに佐賀市内へ向かう中極線のバスに乗り込む。
10数分で大地町のバス停で到着。下車して県道48号を少し佐賀方面へ進む。倉庫のある角で旧道に入り小城方面へ戻る。
古い商店らしい建物が残っている。店先には「ワンマンバスの乗降車要領」の説明板があった。昔のバスには運転手さんとは別に車掌さんが乗車していたから、こういう説明が必要だったのだろう。自動運転が現実化するかもしれない時代からすると隔世の感がある。ちょっと気になったのが小さい字で書かれている「准ワンマン」の意味。ワンマンとどう違うのだろうか。
通りには和洋折衷の面白い建物があった。和風建築に縦長窓が印象的な西洋式建物がダイナミックに組み合わさっている。料亭のようなので一度行ってみたい。この通りがかつて賑わっていたことが伝わってくる。
大きな煉瓦造りの煙突があった。目指す酒蔵のものかと思い近づくが、残念ながら駐車場。入口を探す。
辺りをウロウロしてようやく酒蔵にたどり着く。声を掛けたところ、残念ながらお酒はここに売ってない、とのこと。販売は酒屋さんにおまかせしているらしい。家の近くで売っているお店を聞く。後日、買いに行こう。
気を取り直して再び旧道へ。大きな煉瓦の建物があった。手前には手作りらしい遊具のある公園。どうやら自動車修理工場の建物のようだ。事務所の入口で掃除をする女性がいらっしゃったので声を掛ける。中に入れてもらいご主人にいろいろお話を伺う。
この煉瓦倉庫は、元々、酒蔵の米倉庫だったとのこと。ご主人は明治41年(1901)の新聞のコピーを取り出して「当時の小城郡清酒品評会の褒章授与式の記事です。三日月村から、二等に園正宗、三等に寒露、千菊が選ばれています。当時、三日月には3つの酒蔵があったことが分かります」。戦後、倉庫を譲り受け、事務所兼住居として活用しているという、リノベーションという言葉が一般化する随分前からの先駆者だ。「元々倉庫だったので、夏も冬も室温が一定で住みやすいですが、窓が少なくて暗いのが難点です」と笑う。その後、来店したお客さんを交えて少しおしゃべりしてお暇する。最後に事務所に顔を出した娘さんにおすすめのランチを聞いてみた。バスセンターの近くの喫茶店の日替わり定食が良いらしい。行ってみよう。
先ほどの煉瓦倉庫をかつて所有していた酒蔵があった場所。煉瓦が共通項。倉庫から測ると84mくらいある。かなり広い敷地だったことが分かる。
旧道と県道が合流する地点からさらに山の方へ。突き当りにある鳥居をくぐると岡本天満宮があった。スタイリシュな馬の石像が眼を引く。
隣接する岡本薬師堂には江頭源京さんの石碑。どうやら#果樹栽培に貢献のあった人のようだ。
参道に戻らず野辺の道を行くと小城鍋島家の墓所があった。同家の菩提寺というと 星巌寺が浮かぶが、こちら玉毫寺(ぎょくこうじ)には 3代藩主元武(もとたけ)、6代藩主直員(なおかず)、9代藩主直堯(なおたか)の墓所がある。
竹林を抜けて玉毫寺の本殿脇の道を通る。力強い山門が印象的。ここ玉毫寺は黄檗宗。鹿島編で行った鹿島鍋島家の菩提寺もそうだった。
蛍の名所として有名な祇園川沿いを歩く。菜の花が咲く水辺に鳥が遊んでいる。のどかな春の日。
ちょっと寄道して川沿いの集落へ。道の細さと生垣 が迷路のような空間を作っている。山際には立派な屋根の農家があった。
再び川沿いの道に合流。須賀神社の前まできた。登ろうかと思ったが急な石段に尻込み。太閤腰掛石 に座り考える。近くの商店でビールを買い、上からの眺めながらの一杯を自分へのご褒美とすることで、なんとか奮い立たせる。
真下から見上げるとほぼ壁 ! 石段の幅が狭いくて登りづらい。一歩一歩確実に行く。途中にある鳥居のところで振り返る。転げ落ちそうで怖い。最後は太ももプルプル 、心臓バクバクである。最後はほぼ四つん這いになりながら153段登りきった。
社殿脇の桜は7分咲きくらいか。石段に座って一杯といきたいところだったが、動悸が激しく、ちょっとそんな気分になれない。結局、そそくさ下山。お手水の脇の水路を眺めて心を落ち着かせる。
鳥居前から伸びる細い道から小城駅方向に向かう。道端には恵比須さまがいたり、古い漆喰壁があったり、そこそこ古い道のようだ。
こんもりした木立がある角で左折。木の鳥居が印象的な神社の裏山だった。古い住宅地と新しい住宅地が交互に現れる。ここでなんだか見覚えがある男性を発見。大地町の煉瓦倉庫の自動車工場にやってきたお客さんだ。向こうも気づいた模様。「ここまで歩いてきたの? 大変だよね」と男性。不思議な縁だなぁ。
側溝のわきの細い道を歩いてみる。だんだん飲食店が増えてきた。
ゆめぷらっとの裏あたりで、すごい路地を発見。南方の住宅のような野面積みの石垣。その反対側は煉瓦壁。ところどころ天使の羽のようなちょび髭のような装飾 がある。元々何の敷地だったのだろうか?
勧められた喫茶店到着。なかなか味わいある佇まい。
店内も期待を裏切らない雰囲気。布張りの椅子と年季の入ったテーブル。お客さんも次々入ってくる。喫茶店だからどうかと思いながらビールを注文。キンキンに冷えたグラスを持ってきてくれた。まずは一杯。生き返るわー。
続いて日替わり定食が到着。金目鯛のフライや茶碗蒸し、酢の物、そして奈良漬けの古漬け。まさかのお酒に相性ぴったりなラインナップ!! 大満足です。
食後はコーヒーかソフトクリームを選ぶ。もちろんソフトクリーム。デミタスカップで出てきた。一番底にはコーンフレークが入っていてパフェ風。さすが喫茶店。
小城公園わきの道をJR小城駅まで。映画「男はつらいよ」のロケ地 だった小城高校 。劇中で後藤久美子が通っていた。道沿いの民家の面白い意匠の門柱。左官仕事が光る。桜の名所として知られるが「花見は黙食で」と呼びかけていた
だらだら歩いてしまい想定より遅くなってしまう。列車が来る直前に到着。10896歩で約8km。続いて厳木へ唐津線の黄色い列車で行く。