2020.12.02 UP

城下町の風格残る坂道からスタートー。中年男子が佐賀県全20市町をぶらぶら歩く連載の4回目は多久聖廟周辺をさ迷います。ルールは

      • 公共交通機関で現地まで移動
      • 歩く距離はだいたい2km
      • 来年3月末までに全20市町を散歩する
      • 美味しいものをきちんと紹介する
      • お酒はほどほどなら大丈夫!
      • 基本はぶっつけ本番。面白いものに当たるまで歩くべし(スマホは基本禁止)

と、どんどん増えていく‥。前回の失敗 を踏まえ、午前9時半すぎ、最寄りのバス停で待ち構える。今後の連載スケジュールを考え、午前中、多久取材を終えたら、午後は唐津方面を攻めたい。 時刻表には「ジャンボタクシー」と記載。前回は見逃したのか、最近変わったのかは分からないが、これなら間違えない。

車は定刻どおり到着。車内に流れるFM放送が新鮮だ。車内には3人の乗客。途中、バス停を発進した直後に停車。運転手さんが降りて、通り過ぎた横断歩道へ走る。カートを押すおばあさんに声をかけ、車まで案内した。乗り遅れたおばあさんに気づいて迎えにいった模様。ジャンボタクシーならではの小回りの効いた対応だ。

 

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バスは北方から馬神峠を越え、30分くらいで多久市に入る。適当なところで降りる。「西町バス停」だった。とりあえず、多久聖廟方向に歩くとすぐに

 

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「西ノ原大明神」の看板。約1kmとある。とりあえず行ってみよう。 なだらかな坂が続く住宅街だ。

 

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しばらく歩くと神社らしき空間が見えた。境内に散った銀杏の葉が美しい。

 

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大明神かと思い、寄ってみるがどうも違うようだ。通り抜けて、来た坂道の逆に回ると鳥居があった。

 

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扁額に「天満宮」とあるので、こことは違うようだ。まだ上かな? ということで元の坂に戻り登っていく。 ここまで歩いて、ちょっと気付いたことがある。それは垣根がきれいな家が多いということ。

 

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ほら、整えられているでしょう? 1軒、2軒ではなく、だいたいの家がきちんと管理されている。新しい家が多く、古い街並みという感じではないが、落ち着いた雰囲気があるのはそのためだと思う。 とりあえず緩やかな坂道をまっすぐ行く。人家がなくなり不安になる。とはいえスマホには頼れない。

 

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そして山道になり、風景も完全に山間部。

 

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これは完全に間違ったかな?と思ったところで

 

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道の右手に西ノ原大明神の鳥居が現れる!! このまま山の上まで行ってしまいそうだった。苔むした階段を登ると

 

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神社と寺が並んでいる。右が西ノ原大明神で、左が等覚寺。屋根の高さはほぼ同じ。境内に両方あるケースは見たことあるが、同じ規模で隣り合わせになっているのは記憶にない。

江戸時代、多久領主の姫が悲恋の末、痛ましい死を遂げた後、領主の家に凶事が続いたことから、大明神を勧進。西ノ原大明神となった。その折、姫が告げたといわれる「多久家の興隆と妊婦の安産守護」の故事に基き、地元では安産の神として信仰されている。社殿内の壁には命名札がびっしりと貼られていた。

境内からまっすぐ伸びる道を行く。今度はなだらな下り坂。田園の先に八幡岳が見える。

 

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街からはそこそこ離れているのに、ウォーキングする人と何度かすれ違う。車も少なく、適度な高低差もあるので散歩しやすい街なのだろう。こういう環境なら毎日歩いても飽きないかも。 山裾を歩いていくと、数分で大きな公園に到着。西渓公園というらしい。中に入ると広い芝生の中に大きな瓦屋根が印象的だ。

 

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寒鶯亭(かんおうてい)という立派な建物。国の登録有形文化財に指定されているようだ。ここは江戸時代、多久領家老の屋敷跡だった。大正時代に多久出身の石炭王・高取伊好(たかとりこれよし)が私財を投じて山水公園として整備した。

高取伊好はこの人

 

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銅像の高さは尊敬の大きさに直結している。説明板の「物を開き務めを成した炭鉱王」というキャッチコピーが良い。一般的な炭鉱王の成金的イメージとは一線を画す、文教の街・多久の産んだ偉人だ。もう葉は落ちてしまっていたが、紅葉が美しいとのこと。梅や桜も有名で四季を通じて楽しめる公園のようだ。お客さんらしき人たちが途切れなく訪れていた。

公園を抜けると隣には古い神社が。古い石段を登る。

 

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多久神社だ。こちらの境内には巨大な「従五位多久茂族碑」があった。

 

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多久茂族(しげつぐ)は第11代多久領主。幕末、西洋式兵学をいちはやく取り入れ、戊辰戦争で功績をあげた。また多久の殖産興業に力を注いだという。この題字は明治の元勲・三条実美が手がけている。 その隣には見事な大樹があった。

 

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根元の看板を見ると、樹齢150 年のモミの木、とのこと。これだけ大きければ、世界最大級のクリスマスツリーになりそうだな、とか考えたけど、ここは神社だった。隣にお寺があるのは良いけど、キリスト教は難しいかも。 境内を降りると、ぽっかりとし空間が広がっていた。奥まったところにはまた大きな石碑。「斗南鶴田碑」だ。

 

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鶴田斗南は多久出身で明治期に立法・法務に貢献。特徴的な題字は山田顕義。山田は西郷隆盛に「用兵の天才」と讃えられるほどの軍人だったが、「法律は軍事に優先する」と近代日本の法典編纂に尽力した。 碑の脇には「梶峰城登山入口」があった。

 

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一瞬、登ることを考えたが、午後もまた取材をすることを考え断念。どんなに低い山でも、山歩きはちゃんと用意しとかないと危ないので、と自分に言い聞かせる。 山裾の道に戻り、10分弱行くと、多久聖廟に到着。入口には「多久茂文公」の像。

 

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茂文公は佐賀藩2代藩主・鍋島光茂の四男として寛文9年(1670年)に誕生。3代多久領主・多久茂矩(しげのり)の養子となり家督をつぐ。宝永5年(1708年)、文運教化をはかるために建てたのが「多久聖廟」。

 

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儒教の祖とされる中国・春秋時代の思想家、孔子を祀っている。建物のスタイルは中国様式。禅宗のお堂みたいな感じだ。本葺の端正な瓦屋根が堂々と美しい。 お堂にみとれていると、清掃作業をしていた方が話しかけてくれた。聖廟の歴史について、いろいろ教えてもらう。

ついでに散歩中で出た疑問、なぜ、この街の垣根は美しいのか、を質問。「そもそも西町は城下町でした。何度か火災にあったので、防火のために、マキの生垣が奨励されたと聞いています」との答え。そうか武家屋敷なのか。実際に歩いたので分かるが、結構広い城下町だ。 聖廟から引き返すと「合格の門・五角の門」と書かれた門があった。

 

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手作り感があふれている。歴史ある文教の街ならではのイベントだ。夜はライトアップするのだろう。 そろそろ正午近く。お腹が空いたなぁと近くの物産館へ。中にうどん屋さんがあった。入口に

 

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「地酒あります」の貼り紙。迷わず中に入る。地元のお酒「東鶴」を注文。合わせておでんを寄せていると、ターコイズブルーの片口に入れて持ってきてくれた。

 

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この酒器は、ここの大将が作ったものだという。陶芸とうどんの二刀流だ。メインを何にするか迷う。連続でうどんというのもどうかと思い、丼モノに決めかけたが、他のテーブルに運ばれる「ごぼう天うどん」があまりにもインパクト大だったので、そちらを選ぶことに。おでんをつまみにチビチビやっていると‥。

 

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ドン‼︎ そそりたつ、ごぼ天タワー!!! とうぜんごぼう天から食べる。シャキシャキの食感の後、土の包容力が口の中に広がる。心を落ち着かせ、麺を食べる。もちもちでありながら、しっかりした食感。太めの麺が嬉しい。あっという間に食べ切る。余韻を楽しみつつ、残った出汁をあてに地酒を楽しむ。地元らしきお客さんが続々と入ってくる。その中で昼酒という背徳感。うーん堪らない。

すっかり満足して会計をしようとしたらレジ付近に「幻の羊羹」として有名な某老舗の商品が置いてあるではないか! 迷わず購入。大満足でした。

 

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ちょっと食べ過ぎたな‥。ぶらぶら歩いて最寄りのバス停まで。ここから唐津方面に行く腹づもりだったが、なんと2時間待ち‥。多久駅まで歩くことも考えたが、1 時間以上かかりそう。きょうはすでに1万歩以上歩いているし、うどん出汁で膨らんだお腹ではちょっと難しい‥。武雄に戻る便は30分後。これは出直した方がよさそうだ。 せっかくなので散策しながら「西町」バス停まで戻ることに。

向かいの車道にバス停が見えてきたが、武雄方面にはない。バス停の位置がずれているのは、よくあることなので、そのまま先に進む。2分ほど歩くが見当たらない。不安になり、さきほどの「西町」バス停の反対側まで戻る。10数分後、ジャンボタクシーが到着。ほろ酔い気分で帰路についた。

 

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▼恒例?取材終了後、筆者と担当Mさんとの会話

担当M「石碑多いですね」

筆者「この辺りの特徴かもしれませんが、駐車場の看板も大きな石でできていたり、石をふんだんに使っていたのが印象的でした」

担当M「インスタ映え‥」

筆者「やっぱ地味ですよね‥。もっと紹介したいものもあったんですが、絵柄を気にして泣く泣く削ってこうなったんですけど」

担当M「‥季節感とか欲しいですよね」

筆者「すっかり紅葉も終わってしまいまして」

担当M「次回からは旬の風景を探してほしいですね」

ということでこの連載に新たなルールを追加。

          • 公共交通機関で現地まで移動
          • 歩く距離はだいたい2km
          • 来年3月末までに全20市町を散歩する
          • 美味しいものをきちんと紹介する
          • お酒はほどほどなら大丈夫!
          • 基本はぶっつけ本番。面白いものに当たるまで歩くべし
          • 旬の風景を探そう

 

次回も乞うご期待!?

 

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