松福のそばの川を渡ると住宅街が広がる。路地に流れが早い水路。きれいな水が流れている。元は田んぼだったんだろうか。
車道に戻ると「どんとこい前」というチア精神あふれるバス停を発見。道向こうを見て納得。「どんとこい」という焼肉店があった。
バイパスを跨いだら「のごみ人形工房」に到着。入口には「歩こう鹿島」ののぼりがあった。「のごみ人形」は鍋島更紗を復元した染織家・故鈴田照次さんが「戦後の世を明るくしよう」と作り始めた土人形。カラフルな色使いと柔らかいフォルムが特徴で郷土玩具として愛されている。
工房は新しい干支である牛の制作に大忙し。3人で分担してせっせと作り上げていく。「旬の風景」ということで、写真を取らせてもらう。
『「丑」は各々の境目または転換を意味し、「牛」は誠実さや粘り強さの象徴とされていることから、丑年には”辛抱の時を越え道が開く”という願いが込められています』とのこと。お土産にひとつ購入。
バイパスが開通した頃、能古見地区には美しい茅葺き屋根が点在していた。現在、車窓から眺められる優美な屋根は少なくなってしまった。そんなことを考えながら歩いていたら、茅葺き屋根の工事と出会った。
屋根の一番上に敷く「棟瓦」が外されている。普段見ることはあまりないが、その大きさに驚く。工事を見守っている家主のおじいさんと話す。「この辺も茅葺き屋根は少なくなった。茅葺きは夏涼しくて冬暖かい。葺き直せば何十年も安心」とのこと。この辺りの茅葺きは屋根の下のラインが四隅に向かって反り返っていて非常に軽やか。生活に根ざした文化として、いつまでも残ってほしい。
能古見の集落を抜けて祐徳稲荷神社方面へ向かう。田園地帯で用水路にかかったプライベート橋を愛でる。年季の入ったコンクリート製。薄くて狭い。
しばらくして「普明寺」に到着。スタンプラリーのチェックポイントではないが寄道。
普明寺は1677年に鹿島3代藩主鍋島直朝の長男である直孝によって創建された鹿島藩主鍋島家の菩提寺という由緒正しいお寺。中国式の山門をくぐる。原生林の中、くねくねした参道を歩く。独特の空気感だ。
大きな山門。左右に回廊が伸びている。黄檗宗に特徴的な建築様式とのこと。中庭の樹の下には羅漢さんが。沈思黙考。自分と向き合うのにぴったりの場所だ
マップを見ると普明寺は祐徳稲荷神社の裏にあるようなので山を登れば祐徳稲荷の一番上に出るみたいだ。ということで寺の脇の山道を登ること10分。
あまりの急坂に途中断念、引き返す。素直に門前商店街を目指す途中に、流れの早い水路と石垣に繁茂した薄い桜色の草があった。水路を渡るコンクリートの小さな通路も良かった。
とりあえず参道到着 まっすぐ歩いて祐徳稲荷神社へ。上まで登る元気は無し…本殿付近でスタンプをゲット。
ようやくルートの半分くらい。ここまでで13777歩。次は浜宿方面か…。足取りも重く参道を引き返すと、入口付近のお土産物屋さんが目についた。
「上田商店」と書かれたお店の軒先に吊るされた笠の中に「浅浦甚八笠」を発見!! 鹿島市の浅浦地区に約300年前から伝わる竹の皮で作る「かぶり笠」。軽くて通気性が良く、釣り人や農家に大人気だという。作り手の減少でなかなか手に入らないが、ごく少量作られているようだ。もちろん購入。夏の散歩にぴったり。目立ちそうだけど…。お店の方がお接待してくれた。
昆布茶と漬物。歩き疲れた体に沁みる。ボタンを押すとポンと出る爪楊枝入れが楽しい。すっかり生き返る。
参道を出て数分、古枝公民館にある素敵な石像を見に行く。
「小野原虎吉翁之肖像」。虎吉さんは明治33年から35年間、古枝村長を努めた人物。石像の表情でも分かるように、温厚な性格で、誰からも愛されたという。
歩くこと20分、浜宿に到着。伝建地区の酒蔵通りを行く。板金の装飾が興味深い。
酒造場の事務所にあった鉄製装飾は、窓式エアコンの目隠し用? 別に無くても良いと思うが、そのこだわりに脱帽だ。その他も既製品がない時代の民間工芸の美しさを伝えている。
酒蔵通りを抜け、ルート的には引き返すところだが、敢えて海辺の方に向かう。国道を超えたところに峰松うなぎ屋がある。
軒先には焼台があるのだが、残念ながらもう火を落としてしまったとのこと。串焼きのうなぎの肝を買う。さらに「海茸の一夜干しを追加。矢野酒造で買った肥前蔵心純米と合わせ晩酌だな。
海へ向う。小さな茅葺きが3つ寄り添っていた。
肥前浜宿の伝建地区は酒蔵通りだけではなく、国道を渡った先のこの集落も含まれている。江戸時代から商人や船乗り、鍛冶屋や大工などが暮らし、とてもにぎわっていたという。有明海に近いために現在も多くの漁師が生活しており、細い路地沿いには茅葺きの民家が密集していることが特徴。一般的に現在、残っている茅葺きはある程度大きなものが多いが、この地区は小さなサイズのものが密集していて珍しい。イタリアの世界遺産「アルベロベッロ」にある「トゥルッリ」のような、とんがり帽子が愛らしい。
さらに歩くと長崎本線の鉄橋が見えてきた。アンダーパスをくぐると、鉄橋の脇に歩行者専用の橋がかかっている。
「5人以上同時にわたることはできません」という注意書きに若干不安を抱えながら足を運ぶ。階段をのぼり、平らな通路にさしかかる。鉄橋がすごく近い。特急が通ったら吹き飛ばされそうだ。ちょうど山辺に夕陽が落ちかけている。
鉄橋に落ちるリベットの影が美しい。歩道橋をわたり、夕陽が指す方へ鉄橋の下をくぐる。
再び国道を越え酒蔵通り方面へ。川沿いを戻ると対岸にすごい石段を発見。思わず足を伸ばす。
「臥竜ヶ岡公園」に続く石段のようだが、先のことを考え登るのを断念。そのまま上流へ。川の向こうから見る酒蔵通り地区は新鮮。
残り1つとなった酒蔵通りのチェックポイント「富久千代酒造」へ。塀がかっこいい。
そのまま肥前浜駅へ
「HAMABAR」という地元のお酒が飲める施設が1月にオープン予定とのこと(取材日は2021年12月。2021年1月から好評営業中)。もう列車で戻りたいところだが、スタンプは残り6個。最終列車を調べると意外と遅くまである。ならば、ゆっくり温泉にでも浸かろう。夕暮れの鹿島を歩く。ここでもやはり水路が気になる。
祐徳温泉 宝乃湯に到着した頃にはすっかり陽が落ちていた。初めて来たが、なかなか立派な建物。お湯の種類も多く、ゆっくり疲れを取る。1時間ほどであがったが、まだ時間がありそうだ。お食事処へ行くと、「5時から生ビール半額!」との案内が。暇なお昼に割引サービスするなら分かるが、夕方からとは珍しい。というか素敵だ。迷わず食券購入。小鉢は数種類から選べるが「ささゆき」を選択。聞いたことない料理名だが、どんな物が出てくるのか。
半額生ビールなのに普通のジョッキで登場。「ささゆき」は有田町の料理「ごどうふ」みたいな感じ。炭酸のシュワシュワ感と葛餅のようなツルッとした食感が面白い。畳敷きの広い休憩所ですっかりリラックス。
夜風に吹かれて 残り5カ所を周り 肥前鹿島駅到着。最後のチェックポイントを押し、全19地点を制覇!!
23794歩、総距離なんと約18キロ。これまでで一番長い散歩だった。
帰宅後、海茸の一夜干しとうなぎの肝、そして矢野酒造の肥前蔵心を熱燗にして頂きました。疲れが癒えるー。
▼以下、オフショット「のらフォント」
▼恒例?取材終了後、筆者と担当Mさんとの会話
担当M「文章長いですね」
筆者「今回はスタンプラリーのポイントが多かったので…」
担当M「SAGATOCOのコース案内文には、3回に分けて歩くのはいかがでしょう、と記載されていたんですが」
筆者「えっ! 本当だ、ちゃんと読まないといけませんね…」
担当M「寄道も多かったようですし」
筆者「おかげで良い風景に出会えました」
担当M「確かにそれも散歩の醍醐味なんでしょうが、あんまり長いと読者のみなさんが疲れてしまいますよ。そもそも最初のルールでは歩く距離は2kmくらいだったのでは」
筆者「そうなんですが、ちょっと”撮れ高”に不安があって、ついつい距離が長くなってしまいまして…」
担当M「せめて5kmぐらいにしてもらえませんか」
ということでこの連載のルールを修正。
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- 公共交通機関で現地まで移動
歩く距離はだいたい2km- →歩く距離はだいたい5km
- 2021年3月末までに全20市町を散歩する
- 美味しいものをきちんと紹介する
- お酒はほどほどなら大丈夫!
- 基本はぶっつけ本番。面白いものに当たるまで歩くべし
- 旬の風景を探そう
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次回も乞うご期待!?