2021.02.10 UP

中年男子が佐賀県全20市町をぶらぶら歩く連載の7回目は太良町を歩く。
ルールは

      • 公共交通機関で現地まで移動
      •  歩く距離はだいたい5km
      • 2021年3月末までに全20市町を散歩する
      • 美味しいものをきちんと紹介する
      • お酒はほどほどなら大丈夫!
      • 基本はぶっつけ本番。面白いものに当たるまで歩くべし
      • 旬の風景を探そう

 

早朝、最寄り駅に用事があり、思いついて太良町へ向かう。車窓から見える有明海がまぶしい。

 

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通学生でいっぱいだった車内も、多良駅で全員下車して、残るのは自分ひとりとなった。ところで町名は「太良」なのに駅名は「多良」なのはなんでだろう? 町のホームページには

昭和28年に町政を布いて多良村が多良町に変わり、昭和30年大浦村と合併して太良町となりました。

と記載されている。「大」浦と多「良」が一緒になったのなら「大良」で良さそうなのだが、画数の問題なのだろうか? それはともかく、多良駅が開業したのは1934年(昭和9年)4月16日。「太良」という地名ができる前に存在していたので、駅名は変わらず「多良駅」のまま、ということか。

 

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終点・肥前大浦駅に到着。せっかくなので海辺の道をぐるっと歩く。郷土愛あふれるカレンダーが掲示された駅舎を出て、国道207号を鹿島方面へ進む。駅の裏山に行きたいので線路わきの道をテクテクと。ぱっと見た感じ踏切ないけど、どうやったら線路を越えられるのかな? と思っていたらアンダーパスを発見!!

 

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これは低い。身長170でギリギリ頭がつかない感じ。なかなかの洞窟感だ。歩道の端に切り取られた水路を流れる水音が”洞内”に響く。外に出て線路を見上げると、先ほどまで乗っていた列車が折り返し運行していた。

 

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道端に植えられた梅のつぼみはもうそろそろ開きそう。みかん畑の間の道をさらに登っていく。小さな峠を越えたところに茶畑が。地形にへばりつくように緑の絨毯が敷き詰められている。よく見ると茶木が丸く刈り取られている。大規模な茶園では「乗用摘採機」という人が運転しながら収穫する機械が収穫しやすいように、茶木はテーブル状に整えられる。丸い茶木は「乗用摘採機」が入らない茶畑の特徴。2人1組で小型の機械を持ちながら摘採する上に、収穫した茶葉も人力で運ばなくてはいけない。農家の人の汗が作った景観だ。

さらに道を登ると、空が広くなっていく。峠だ。

 

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登りきった先には有明海が広がる。山道を下ると大浦中学校の前に出た。敷地内には気象庁の「津波観測施設」があった。

 

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ここからいよいよ海辺の道というところなのだが、気になる交通標識発見。

 

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ごくありふれた「駐車禁止」マークなのだが、その下に「3月1日から5月31日まで」と掲示されている。その3カ月間、この辺りで一体何が行われるのか? 標識が設置されるくらい、たくさんの車が来る出来事とは何だろうか? 謎である。

 

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コンクリート製の防波堤沿いに海辺の道を進む。対岸の熊本側が霞んで見える。しばらく行くと浜が見えてきた。下りてみると小さな貝殻がたくさん積もっていた。有明海沿岸にある民家では、貝殻を燃やした材料で作る「貝灰漆喰」を壁塗りに使っていた。工場もたくさんあったらしいが、現在、専業で作っているのは大川市に1件あるのみ。左官さんに聞くと、「貝灰漆喰」は一般的な「漆喰」に比べて白味が抑えられていて眼に優しい、とのこと。サスティナブルという意味でもたくさんに知ってほしい素材だ。

 

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道に戻り、カーブを曲がると港についた。のどかな水面に漁船が浮かんでいる。歩いていて気になったのが海沿いの住宅の切妻部分にある白い板。通信関係の機械みたいなのだが何なんだろうか?

 

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さらに進む。空が青くて気持ち良い。先ほどより大きな港に到着、防波堤の先には春霞の上にぽっかり浮かぶ雲仙岳。

 

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港を散策。白目が強調された恵比寿さま。なんだかユーモラスで一緒にお酒を飲みたくなる。残念ながら自販機は見つからず。

 

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散歩再開。目の前を大きな鳥が横切る。何度も旋回を繰り返す。猛禽類のようだが名前までは分からない。

 

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そういえばずっと鳥の鳴き声がしていたな…。立ち止まって海を見ると、波間にぷかぷかと海鳥が浮かんでいた。その様子をぼんやり眺めていたら、空の上を黒い雲が飛んでいた。

 

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形を常に変えながら福岡方向から熊本方向へ。有明海沖を鳥の群れが飛んでいたのだ。ゆっくり歩いていないと出会えない光景。落ち着いて見渡すと、いろんな鳥を見つけることができる。サギやカモメやシギ。

 

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体の大きな鳥ほど高いところを飛んでいる。ラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)に登録されている肥前鹿島干潟にも近く、暮らしやすい環境にあるのだろう。

鳥に心奪われつつ歩みを進める。道はここから大きく曲がっていくが、運動場の先にある防波堤がまっすぐ雲仙に伸びている。遠回りになるが、防波堤の先まで行ってみよう。

 

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一歩ごとに雲仙が大きくなる。雲仙の前で海鳥の群れが踊っている。

 

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どんどん歩いて防波堤の突先まで。雲仙の手前にある堤防では1羽の鳥が静かに佇んでいた。コンクリートの壁に腰掛け、その様子をしばらくぼーっと眺める。波の声、風のざわめき、優しい陽の光。

 

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10分くらい居ただろうか。そろそろ、と思った瞬間、鳥が飛び立った。なんだか気持ちが通じ合ったようで、言い得ぬ多幸感をもらった。

 

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防波堤を戻る。養殖いかだが波に揺れている。良い顔の恵比寿さんも。竹崎の展望台が見える。

 

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海沿いの道を離れ山手の集落を歩く。細い路地が縫いように続く。空き地に咲く花が春が近いことを教えてくれる。

集落の外れまで、大分上ってきた。丘の上に大きな石を積み上げた謎の場所があった。急な坂を登り、そこまでいってみる。

 

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そこそこ大きな石がごろっと、2mくらいの高さまで置かれている。ただの石置き場のようでもある。でも、縦長に並んだ石たちの先には、竹崎の山が見えて、全体の軸線が通っている。奈良・明日香の石舞台古墳のようだし、20世紀を代表する彫刻家イサム・ノグチの作品のようでもある。なかなか良い風景だ。

興奮が治まり、冷静に足元を見ると、植物の種がいっぱい付いていた…。これどっかで取らないと。お腹も空いたし、国道207号に戻りつつ、最初に出会ったお店に入ろう。

謎の岩群の前の坂を下り、ぶつかった大きな道をテクテク進む。まったく民家がない。不安を抱えながら歩くこと10分弱。目の前に蟹の絵が現れた!! どうやら牡蠣焼き小屋のようだ。

 

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店内の水槽には、いろんな産地の牡蠣並んでいた。「かきは産地も様々です!」とのことだが、ここは地元竹崎かきを選ぼう。ひとつの籠に1kg。ひとり分としては多い気がしたが、結構歩いて来たし、これくらい入るだろう。焼く場所は、屋内と屋外バンガローが選べた。せっかくなので見晴らしが良さそうな屋外へ。

 

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バンガローの煉瓦で組まれた焼台の熱源はガス。網の上に牡蠣を乗せる。煙も少なく快適だ。数分でポーンと口が開く。少し我慢して、左手につけた軍手で牡蠣を持ち中身を出す。ぶりっぷり!!

 

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旨味が強い。特に貝柱に凝縮。たまらずビールを流し込む。例年、牡蠣小屋には行っているが、いつもは車なのでノンアルしか飲めない。やっぱりビールがベストマッチだ。調子に乗って蟹飯と蟹味噌汁も追加。こちらも超おすすめです。

満足しつつ店内で会計をしつつ、壁を見るとサインが貼ってある。「たけし軍団」の上に「布袋寅泰」。通なところに来てるなー。

 

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すっかり膨れたお腹をさすりつつ、店の前の道を進む。15分ほど歩くと長崎本線の踏切。

 

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さて、この先どうしよう? 肥前大浦駅に戻るか、長崎県境を目指すか。しばらく悩んだ後、県境へ向かう。コミュニティバスもあるみたいだし、キツかったら、それに乗ればよいし。

 

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国道207号を南下する。点在する牡蠣小屋の手描き看板が良い感じ。20分ほど歩くと下り坂の先に雲仙が見えてきた。近くに「有明海の湯」という看板があった。後で入ろう。

 

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さらに進むとコンビニがあった。「太良県界店」。「県界」で「けんざかい」と読むようだ。「県境」ではなく「県界」なのはなぜだろう? と疑問を抱えつつ道を行くと、店のすぐ先に大きな橋があった。川が県境になっているケースもあるので、この辺りかな、と思っていたが、それを表す表示的なものはない。もっと先かな? と思っていると、橋の上に「路面凍結注意」と書かれた看板。下に「長崎県」と書かれていた。

目的地に着いたことだし、さっきの温泉に行って帰ろう。来た道を引き返す。最寄りのバス停を見つけたので帰りの時刻をチェック。なんとコミュニティバスは試験運行中で、この日は運休だった…。ここから肥前大浦駅まで2kmくらい。ちょっとキツイなー。風呂上がりに汗かきたくないし。まあお風呂に入って考えよう。

 

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「有明海の湯」到着。フロントで駅までの交通手段を聞くが、やはりバスはない。タクシーは呼べるとのことなので、電話番号を教えてもらい連絡、1時間後に予約する。
安心したところでお風呂でゆっくりする。露天風呂からは、悠然と佇む雲仙を愉しめた。

風呂から上がり、すでに待っていたタクシーに乗り肥前大浦駅へ。あっという間に到着。今回は13868歩で約10kmくらい歩いた。
肥前山口駅行きの列車に乗る。そういえば湯上がりの一杯がなかったな…。鹿島取材で見つけた肥前浜駅の日本酒バーはもうできているはず。ちょっと立ち寄ってみるか。

 

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肥前浜駅で下りて「HAMA BAR」へ。鹿島市内6蔵元の日本酒が置いてある。飲み比べセットは「大吟醸」「純米吟醸」「純米」などランク別。各蔵のお酒が3盃ずつ愉しめる。
1本後の列車に乗ればゆっくり楽しめるのだが、次の用事に間に合わない。路線バスを利用すれば、なんとか10分くらい滞在できそう。ということで、1盃だけ頂くことに。先日の鹿島取材でお世話になった矢野酒造の蔵心をチョイス。おつまみは海苔セット。海苔は焼海苔、味海苔、塩海苔の3種を食べ比べるという趣向。やや甘めの飲み口に、海苔の塩っぱさがベストマッチ。今度はゆっくり過ごしたい。

 

▼取材終了後、筆者と担当Mさんとの会話
担当M「ずいぶん間が空きましたね」
筆者「…緊急事態宣言中に取材するのはどうかな、と思いまして」
担当M「それはそうでしょうが、取材から文章にするのに時間がかかり過ぎてないですか?」
筆者「実際に歩いて見ると、面白いものが多すぎて、やっぱりどうしても文章量が多くなってしまうんですよ…」
担当M「20市町の半分も行っていませんね」
筆者「次からは適切な文章量を心がけつつ、1日2市町取材するようにします!!」
担当M「本当に出来るのかなぁ?」

 次回も乞うご期待!?

 

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