中年男子が佐賀県全20市町をぶらぶら歩く連載の15回目は、松浦鉄道沿線の風土が豊かな有田町西有田を歩きます
ルールは
-
-
- 公共交通機関で現地まで移動
- 歩く距離はだいたい5km
- 2021年3月末までに全20市町を散歩する
- 美味しいものをきちんと紹介する
- お酒はほどほどなら大丈夫!
- 基本はぶっつけ本番。面白いものに当たるまで歩くべし
- 旬の風景を探そう
JR有田駅から松浦鉄道に乗り換える。沿線は桜が満開。車窓を眺めるだけでもう花見気分だ。ディーゼルエンジンの音が心地よい。
蔵宿駅のホームは桜の名所。木造駅舎にぴったりだ。
線路沿いから山手の道へ。入口には煉瓦倉庫がある。横長のプロポーションが美しい。
国見岳山腹に向かって里山を上る。湯川王冠って何を作ってるんだろう?(調べてみたら、元はガラス瓶の蓋=王冠を作っていたそうですが、今は金属加工全般を手掛けているそうです)
お城みたいな石垣がある民家。丸い石を積み上げた野面積みだ。
謎の看板? の通りに行くと、以前宿泊したことある「タイマーの宿」があった。
オープンして、約3年になる1日1組限定の宿。電気を使わない暮らしと野菜中心の料理が体験できる。プロの料理人が泊まりに来ることも多いという。
先日堪能した料理。野菜とは思えない複雑な味わい。しかもガスレンジを使わず薪だけで調理。これは是非体験してほしい。
佐賀市内のレストランを閉めて、こちらに移住。周囲の農家と一緒にイベントを行ってきた。現在は「TIMER ORGANIC FARMERS MARKET」を奇数月の第3日曜日に開催している。先日行われた同イベントには地元農家さんを中心に、豆腐屋さんや蒟蒻屋さんも参加。音楽の演奏も行われた。雨の中、県内外からお客さんが来ていた。また、松浦鉄道を利用したサイクリングプランも提案している。
ちょうど、オーナーの高岡さんがいたのでちょっと挨拶。有田町の情報を聞いておく。ナチュラルワインと有田特産の金柑をもらう。
謎の看板の正体は、牛舎をリノベーションした複合施設「GENIUS LOCI(ゲニウスロキ)」。残念ながら営業していなかった。外壁の木材が自然と年を重ねた色をしていた。後で聞いたところ、なんと無塗装 。低温乾燥により木の細胞が壊されないので、素材が本来持っている質感が保たれるらしい。
わき道に入る。溜池には水鳥が遊んでいた。黒髪山系が見える。頂いた金柑を食べながら歩く。甘くて種まで食べられる。ゴミが出ないから良いな。
鎮守の森が見えたので右折。国道202号の方へ。昭和のテイストあるお寺を見ながら、国道をわたり、踏切を越える。
蔵宿にある有田川沿いの料理屋さん跡。「みはらしや」という店名が良い。正面から見ると、2階に大広間があったことが予想される。そりゃ見晴らしが良いだろう。
民家の玄関屋根を支える柱。石の形に合わせて削っている。平らな石ではないから、結構手間がかかっている。
すごい豪邸。ひとつの建物なのに屋根がいっぱいある。玄関の石柱、瓦屋根をのせた漆喰壁が威厳を高める。漆喰壁の薄さが驚異的。これで壊れている場所が見当たらないのは技術が高い証拠。炭鉱王の住宅に匹敵する完成度だと思う。庭側から見ると茶室もあった。
ゆるやかに曲がる道。晴れ間も少しのぞくようになった。防火水利の中で泳ぐ鯉。飼っているのかな?
橋の工事で通行止めだったので、踏切を渡り国道へ
有名な唐揚げ屋さんの本店。この建物の先に移転しているので、正確には「0M先」ではない。唐揚げは厳木編で食べているので今回は泣く泣くパス。
ちょうど松浦鉄道が通っていく。再び踏切を越え旧道に戻る。
大木に入ると、大きな煙突が見える。あれは何だろう?道の脇には用水路。猫が水辺に下りていた。ハンティング? 顔を洗ってる? カメラを向けるとサッと逃げる。
道沿いに個人商店があった。店名はどこにも書いてない。そういうお店は昔から営業しているケースが多い。中に入ってみる。駄菓子が売ってあった。ワインのお供にいろいろ購入。それでも200円くらい。お母さんに店名を聞いたところ、「正式には松尾商店と言いますが、この辺の人はみんな『しんみせ』と呼びます」とのこと。
先ほどの煙突。造り酒屋のものだった。訪ねたときは酒造りを休止しているようだった。残念。
新しい住宅が並ぶ一画に古い民家。2階の木造ガラス建具とパステルピンクの壁の色がオシャレ。
これまでの連載で最も立派な石造りのプライベート橋も忘れず撮影。
道沿いにあた古い商家。複雑な屋根のリズムも面白いが、1階モルタル壁に埋め込まれたガラスブロックの窓が良い感じ。旅館ぽいけど、どうだろう?
町外れには農地整備を記念する石碑があった。宿場町らしい建物が連なる町並みでは、大好物の煉瓦壁も。そして大木駅に到着。もうちょっと先までいって昼メシを食べよう。
この辺りはアンダーパスの宝庫。煉瓦造のものや石造のものもあった。素材を換えるのはなぜだろう? 地質などが関係しているのか? 天井は線路がむき出し。列車通過中に下にいたら、車両のお腹を見ることができる。タイミングが合えば挑戦したいが、そこまで”鉄分”が濃いわけではない。
国道に出る途中の農業倉庫。基礎の石積みが良い。道路からは唐船山が見える。
線路沿いにあるお店へ。カウンター脇の窓から列車が見える。やはり鉄道好きがやってくるという。
条件反射でビールを注文したが、メニュー裏に冷凍クジラを発見!! 日本酒に変更。ご主人の「ぬる燗にしましょうか?」という提案に乗っかる。
凍った肉が、ぬる燗で温められた口の中でとろける。獣を食べている実感が体にエネルギーを注入してくれる。と、そこに列車が通過。あわててカメラを向けるが失敗。列車が近すぎて絵にならない。
メインはカツ丼。甘めに出来てて、疲れた体に心地よい。ペロッといけた。
ご主人は新潟県出身。新幹線の食堂車で働いていたときに車内販売員の女性と結婚。奥さんの故郷有田で40年前、このお店を開業したという。
列車の時間まで余裕があるので、腹ごなしに唐船山のふもとまで行く。川沿いの桜並木も満開。
唐船公園のグランドも桜が最盛期。山頂まで登ろうかと思ったが、道の状態があまり良くなく断念。標高が低いからと侮ってはいけない。ここは唐船城という堅牢な山城だったのだ。日本酒でいい気分の中年男子には荷が思い。
公園に引き返しグラウンドのベンチに腰掛ける。もらったナチュラルワインでひとり花見。つまみは駄菓子のスルメ生臭さが消えて意外と合う。贅沢なひとときだった。
さてそろそろ大木駅に向おう。だいたいの方向が分かっているので適当に歩いていく。小学校の校庭には二宮尊徳の銅像があった。道なりにいくと大木駅の真ん前に出た。
細い鉄骨で組まれているホーム。階段を上る。ベンチの後ろには地元小学生が描いたイラスト。良いセンス。松浦鉄道は全駅、沿線の子どものイラストを飾っている。いつか全駅を歩いてみたい。
列車が到着。松浦鉄道は伊万里駅から松浦、平戸を経由して佐世保まで通っている。コロナが落ち着いたら、お酒を飲みながらのんびり乗ってみよう。今回は11793歩、約9kmの旅だった。
▼取材終了後、筆者と担当Mさんとの会話
担当M「1日2カ所取材するって言ってませんでした?」
筆者「当初は、この後伊万里に行って取材するつもりだったんですが…。昼ごはんに時間を掛けすぎてしまい予定の列車に乗れず…」
担当M「冷凍クジラ美味しそうでしたね」
筆者「あれでスイッチが入ったのは否めません」
担当M「とはいえ、カツ丼はやりすぎでは?」
筆者「そう思ったんですが、一番最初に注文していたんで途中で変更できないかな、と思って」
担当M「そういえば体重はどうなってます?」
筆者「………………………………………………」
残り1週間で4市町。果たして3月末までに全20市町歩き終わるのか? 次回も乞うご期待!?