その16 有田編 情景豊かな松浦鉄道沿線 ぬる燗とワインでほろ酔い

中年男子が佐賀県全20市町をぶらぶら歩く連載の15回目は、松浦鉄道沿線の風土が豊かな有田町西有田を歩きます

ルールは

      • 公共交通機関で現地まで移動
      • 歩く距離はだいたい5km
      • 2021年3月末までに全20市町を散歩する
      • 美味しいものをきちんと紹介する
      • お酒はほどほどなら大丈夫!
      • 基本はぶっつけ本番。面白いものに当たるまで歩くべし
      • 旬の風景を探そう

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JR有田駅から松浦鉄道に乗り換える。沿線は桜が満開。車窓を眺めるだけでもう花見気分だ。ディーゼルエンジンの音が心地よい。

蔵宿駅のホームは桜の名所。木造駅舎にぴったりだ。

 

 

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線路沿いから山手の道へ。入口には煉瓦倉庫がある。横長のプロポーションが美しい。

国見岳山腹に向かって里山を上る。湯川王冠って何を作ってるんだろう?(調べてみたら、元はガラス瓶の蓋=王冠を作っていたそうですが、今は金属加工全般を手掛けているそうです)

お城みたいな石垣がある民家。丸い石を積み上げた野面積みだ。

謎の看板? の通りに行くと、以前宿泊したことある「タイマーの宿」があった。

 

 

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オープンして、約3年になる1日1組限定の宿。電気を使わない暮らしと野菜中心の料理が体験できる。プロの料理人が泊まりに来ることも多いという。

 

 

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先日堪能した料理。野菜とは思えない複雑な味わい。しかもガスレンジを使わず薪だけで調理。これは是非体験してほしい。

 

 

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佐賀市内のレストランを閉めて、こちらに移住。周囲の農家と一緒にイベントを行ってきた。現在は「TIMER ORGANIC FARMERS MARKET」を奇数月の第3日曜日に開催している。先日行われた同イベントには地元農家さんを中心に、豆腐屋さんや蒟蒻屋さんも参加。音楽の演奏も行われた。雨の中、県内外からお客さんが来ていた。また、松浦鉄道を利用したサイクリングプランも提案している。

ちょうど、オーナーの高岡さんがいたのでちょっと挨拶。有田町の情報を聞いておく。ナチュラルワインと有田特産の金柑をもらう。

 

 

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謎の看板の正体は、牛舎をリノベーションした複合施設「GENIUS LOCI(ゲニウスロキ)」。残念ながら営業していなかった。外壁の木材が自然と年を重ねた色をしていた。後で聞いたところ、なんと無塗装 。低温乾燥により木の細胞が壊されないので、素材が本来持っている質感が保たれるらしい。

 

 

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わき道に入る。溜池には水鳥が遊んでいた。黒髪山系が見える。頂いた金柑を食べながら歩く。甘くて種まで食べられる。ゴミが出ないから良いな。

鎮守の森が見えたので右折。国道202号の方へ。昭和のテイストあるお寺を見ながら、国道をわたり、踏切を越える。

 

 

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蔵宿にある有田川沿いの料理屋さん跡。「みはらしや」という店名が良い。正面から見ると、2階に大広間があったことが予想される。そりゃ見晴らしが良いだろう。

民家の玄関屋根を支える柱。石の形に合わせて削っている。平らな石ではないから、結構手間がかかっている。

 

 

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すごい豪邸。ひとつの建物なのに屋根がいっぱいある。玄関の石柱、瓦屋根をのせた漆喰壁が威厳を高める。漆喰壁の薄さが驚異的。これで壊れている場所が見当たらないのは技術が高い証拠。炭鉱王の住宅に匹敵する完成度だと思う。庭側から見ると茶室もあった。

 

 

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ゆるやかに曲がる道。晴れ間も少しのぞくようになった。防火水利の中で泳ぐ鯉。飼っているのかな?

橋の工事で通行止めだったので、踏切を渡り国道へ

 

 

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有名な唐揚げ屋さんの本店。この建物の先に移転しているので、正確には「0M先」ではない。唐揚げは厳木編で食べているので今回は泣く泣くパス。

ちょうど松浦鉄道が通っていく。再び踏切を越え旧道に戻る。

 

 

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大木に入ると、大きな煙突が見える。あれは何だろう?道の脇には用水路。猫が水辺に下りていた。ハンティング? 顔を洗ってる? カメラを向けるとサッと逃げる。

 

 

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道沿いに個人商店があった。店名はどこにも書いてない。そういうお店は昔から営業しているケースが多い。中に入ってみる。駄菓子が売ってあった。ワインのお供にいろいろ購入。それでも200円くらい。お母さんに店名を聞いたところ、「正式には松尾商店と言いますが、この辺の人はみんな『しんみせ』と呼びます」とのこと。

 

 

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先ほどの煙突。造り酒屋のものだった。訪ねたときは酒造りを休止しているようだった。残念。

新しい住宅が並ぶ一画に古い民家。2階の木造ガラス建具とパステルピンクの壁の色がオシャレ。

これまでの連載で最も立派な石造りのプライベート橋も忘れず撮影。

道沿いにあた古い商家。複雑な屋根のリズムも面白いが、1階モルタル壁に埋め込まれたガラスブロックの窓が良い感じ。旅館ぽいけど、どうだろう?

町外れには農地整備を記念する石碑があった。宿場町らしい建物が連なる町並みでは、大好物の煉瓦壁も。そして大木駅に到着。もうちょっと先までいって昼メシを食べよう。

 

 

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この辺りはアンダーパスの宝庫。煉瓦造のものや石造のものもあった。素材を換えるのはなぜだろう? 地質などが関係しているのか? 天井は線路がむき出し。列車通過中に下にいたら、車両のお腹を見ることができる。タイミングが合えば挑戦したいが、そこまで”鉄分”が濃いわけではない。

国道に出る途中の農業倉庫。基礎の石積みが良い。道路からは唐船山が見える。

 

 

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線路沿いにあるお店へ。カウンター脇の窓から列車が見える。やはり鉄道好きがやってくるという。

条件反射でビールを注文したが、メニュー裏に冷凍クジラを発見!! 日本酒に変更。ご主人の「ぬる燗にしましょうか?」という提案に乗っかる。

 

 

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凍った肉が、ぬる燗で温められた口の中でとろける。獣を食べている実感が体にエネルギーを注入してくれる。と、そこに列車が通過。あわててカメラを向けるが失敗。列車が近すぎて絵にならない。

 

 

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メインはカツ丼。甘めに出来てて、疲れた体に心地よい。ペロッといけた。

ご主人は新潟県出身。新幹線の食堂車で働いていたときに車内販売員の女性と結婚。奥さんの故郷有田で40年前、このお店を開業したという。

 

 

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列車の時間まで余裕があるので、腹ごなしに唐船山のふもとまで行く。川沿いの桜並木も満開。

唐船公園のグランドも桜が最盛期。山頂まで登ろうかと思ったが、道の状態があまり良くなく断念。標高が低いからと侮ってはいけない。ここは唐船城という堅牢な山城だったのだ。日本酒でいい気分の中年男子には荷が思い。

 

 

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公園に引き返しグラウンドのベンチに腰掛ける。もらったナチュラルワインでひとり花見。つまみは駄菓子のスルメ生臭さが消えて意外と合う。贅沢なひとときだった。

 

 

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さてそろそろ大木駅に向おう。だいたいの方向が分かっているので適当に歩いていく。小学校の校庭には二宮尊徳の銅像があった。道なりにいくと大木駅の真ん前に出た。

 

 

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細い鉄骨で組まれているホーム。階段を上る。ベンチの後ろには地元小学生が描いたイラスト。良いセンス。松浦鉄道は全駅、沿線の子どものイラストを飾っている。いつか全駅を歩いてみたい。

 

 

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列車が到着。松浦鉄道は伊万里駅から松浦、平戸を経由して佐世保まで通っている。コロナが落ち着いたら、お酒を飲みながらのんびり乗ってみよう。今回は11793歩、約9kmの旅だった。

 

▼取材終了後、筆者と担当Mさんとの会話

担当M「1日2カ所取材するって言ってませんでした?」

筆者「当初は、この後伊万里に行って取材するつもりだったんですが…。昼ごはんに時間を掛けすぎてしまい予定の列車に乗れず…」

担当M「冷凍クジラ美味しそうでしたね」

筆者「あれでスイッチが入ったのは否めません」

担当M「とはいえ、カツ丼はやりすぎでは?」

筆者「そう思ったんですが、一番最初に注文していたんで途中で変更できないかな、と思って」

担当M「そういえば体重はどうなってます?」

筆者「………………………………………………」

 残り1週間で4市町。果たして3月末までに全20市町歩き終わるのか? 次回も乞うご期待!?

その1 佐賀編 古湯・熊の川 ぬる湯で読書

佐賀駅バスセンターから古湯・熊の川温泉へのバス往復乗車券に、両温泉で使える利用券1,000円分が付いているお得な「ぬる湯くつろぎきっぷ」。料金1,600円と、なんと通常より最大1,220円お得!! かつて、佐賀県の公式ウォーキングアプリ「SAGATOCO」のおかげで1カ月に約4キログラムの減量に成功したが、ステイホームを言い訳にすっかり元に戻ってしまった…。このままではいけない!! この物語は、ひとりの中年男子が「ぬる湯くつろぎきっぷ」を手に、ある休日、古湯・熊の川温泉から再び歩き出すところから始まる…。

※これから始まるコラムは「モテモテさが」2020年9月号に掲載されたものです。なぜこのサイトに再び掲載されたのか? その事情は文章最後に記載されています。

 

 

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■限定2000枚のきっぷ

 

まずはバスの時間をグーグルマップで調べる。自宅から古湯温泉への経路を検索すると、最適なバスの時間まで教えてくれるから便利だ。JR佐賀駅に着いたら、構内にある「佐賀市観光案内所」で「ぬる湯くつろぎきっぷ」を購入。同きっぷは2シートが1セットになっており、一番の上のシートはバス往復券と300円の温泉利用券がある。下のシートには350円の温泉利用券が2枚ついている。それらをちぎって使う。温泉利用券は20施設で使用可能で、入浴のほか、飲食などにも使えるという。販売は来年2月末まで。限定2000枚ということなので、興味のある方は早めにどうぞ!!

 

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バスセンター7番のりばで待っていると「古湯温泉行き」バスが到着。さっそく乗り込む。バスは市街地をしばらく走った後、20分ほどして川上峡に到着。赤い橋を渡り終わると、「ここから先は自由な場所で降車できます」とアナウンス。ちょっと降りてみたい衝動にかられるが我慢我慢。車窓からどんどん緑が鮮やかになる風景を楽しむ。バスは嘉瀬川沿いを上り、約45分で古湯温泉に到着。すごく快適な旅だった。

 

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街歩きスタート。SAGATOCOアプリを立ち上げつつルートを考える。とりあえずご飯をどうしよう。まずはバス通り周辺を歩く。石畳が足に心地よく、いろんな模様があって楽しい。「古湯温泉」と書かれたゲートの手前に小料理店を改装したような店「シェ・ハイジ」があった。自家製ヤギミルクを使ったチーズと地元野菜のデリプレートと書いてある。しかもビオワインがある!! 今日は自動車を使わないので心置きなく呑める。ここだと決めたが店内は満員。席が空いたら連絡をもらえるということなので、しばらく散歩しよう。

 

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古湯は芸術家が愛した町。夭折の天才画家・青木繁や近代短歌を確立した斎藤茂吉、中国近代文学・歴史学の先駆者である郭沫若(かく・まつじゃく)が滞在した。中でも推理小説家の笹沢左保はこの町を愛し、実際に暮らしていた。その住居の一部が「記念館」として有志により公開されている。お店の込み具合から、30分以上かかると考え、温泉街から少し離れた「笹沢左保記念館」まで足を伸ばすことにした。

 

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旅館が並ぶ路地を歩いて、貝野川にかかる、かじか橋を渡る。グランド脇の木陰を行き、中の橋を越える。対岸にはレンガ造りの発電所が見える。嘉瀬川の流れも速い。しばらく坂を上がると、緑の棚田の先に洋風の住宅が見えてくる。「笹沢左保記念館」だ。

 

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  笹沢左保は1930年、横浜市生まれ。推理小説、サスペンス小説、時代小説など、約40年の作家生活で380冊もの著書を残した。代表作「木枯らし紋次郎」は1970年代に名匠・市川崑監督がTVドラマ化。アウトローなヒーロー像が社会現象となった。87年、古湯映画祭へゲスト出演した際「田舎暮らしの経験のない私が空想していた故郷の風景がここにある」と、この地に居を構えることを決断した。7年間にわたり、ここで作品を作り続けた。

 

■ぬる湯で読書

 

現在は執筆していた書斎が記念館として公開されている。入館料は300円。直筆原稿など貴重な資料が展示されている。笹沢の全著作も揃っているが、これは館長の島ノ江修治さんら有志が集めたもの。同館は、各旅館に「笹沢文庫」として本を置いてもらうなど、笹沢左保を軸とした町おこし活動に取り組んでいる。文豪が愛した風景を眺めながら小説家気分を味わっていると、お店から連絡が。温泉街へ戻る。

 

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「シェ・ハイジ」の店内は外観と違い、エキゾチックな佇まい。入口にはカヌレなど美味しそうな焼菓子が置いてある。さっそくデリプレートを注文。もちろんビオワインの赤も。しばらくしてプレートとグラスワインが運ばれてくる。まずは冷たいポタージュ。なんとも爽やかな舌触り。かぼちゃとヤギミルクで仕立てられているという。胃が落ち着いたところで、ヤギミルク入りチーズのトーストを。うーん、炭をまぶした独特な香りとチーズの清冽な食感がワインにぴったりだ。ナスのグリルマリネや豚肉とバジルのテリーヌなど、大満足の昼ごはんとなった。

 

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お腹も満足したし、次は「ぬる湯」へ行こう。英龍温泉の入浴料は半日券370円。受付で「きっぷ」2枚目の350円券を渡し、差額の20円を払う。以前、こちらで入浴した際、湯船に浸かりながら読書を楽しむお客さんがいた。受付で許可をもらい、ついに挑戦してみる。事前に古書店で笹沢左保「傷だらけの放浪」を購入していたので、防水パックに入れてお風呂へ持ち込む。 古湯温泉は不老長寿の霊薬を求めてきた徐福が「湯の神様」のお告げにより発見したといわれている。泉温38度とぬるめのお湯とぬるぬるした心地よい肌触りから「ぬる湯」と呼ばれる。体をしっかり洗い、いよいよ読書タイム。浴槽の縁に頭を乗せ本を読む。窓からの光が水面に反射して本を照らしてくれる。30分くらいで出る予定だったが、笹沢独特の速いテンポで進む物語についついページをめくる手が止まらなくなり、気づけば1時間近くに。風呂上がり、じっとりと汗が出てくる。体の中から熱が出てくる感じ。

近くのスーパーでビールを購入。足湯で休憩しながらチルアウト。SAGATOCOを見ると、ここまでで約5千歩。もうちょっと歩きたい。まだチケットが650円分残っているし、せっかくなので熊の川まで下りることに

 

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■ご褒美の滝 

 

温泉街を下り、斎藤茂吉の歌碑の横を通り、宮ノ渕橋を渡る。田んぼを眺めながらしばらくすると吊橋が見える。ここは車で国道を通るたびに気になっていた。長年の念願をかなえるため渡ってみる。「定員3人」という注意書きにちょっとびびりながら足を進める。数メートル行くと揺れだす。 眼下の轟々と流れる急流が恐怖心をあおるあおる!! 足早に進み対岸に到着。なかなかスリリングな体験だった。国道へ出る。木立の中から白い岩盤を流れる急流が見える。せっかくの歩きなので「雄渕雌渕公園」のある旧道を行こうと思ったが分岐点で「通行止め」の看板。国道を下ることに。雄渕トンネルに入らず、川沿いの脇道へ。陽射しは強いが木陰が多く、そんなに暑く感じない。10分ほどで「雄渕雌渕公園」に。対岸へ渡る橋のたもとに郭沫若の立派な文学碑があった。 

 

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郭沫若は1892年(明治25年)、中国生まれ。1914年に日本へ留学し九州帝国大学医学部を卒業。第二次世界大戦後は中華人民共和国の建国に参加。政務院副総理、中国科学院院長を経て、54年には全人代常務副委員長に就いた。一方で42年、代表作である戯曲「屈原」を発表。近代文学・歴史学の先駆者として活躍した。

郭は24年、妻子を連れて、熊の川と古湯に約1カ月逗留する。私小説的作品「行路難」の中には「夕日が川上川の川面に照っていた。澄んだ清々しい流れがきらきらと輝く白い石の間から歓呼の声をあげて、湧き立っていた。青翠の寒林、まっかなまんじゅしゃげ、黄金色の柿のある両岸の高い山も、一進一退して人に向かってうなずき微笑しているように思われるのだった」という一文がある。碑の周りはモミジが瑞々しい青葉をつけていた。秋には美しい紅葉が楽しめそうだ。

そばにあった湧き水で顔を洗ってさっぱりしたら、先へと歩を進める。国道との合流地点の直前、道路の下に滝を発見。歩いてここまで来たことのご褒美。ひんやりした空気が疲れた体を癒やしてくれる。そこから国道を延々と歩き、ようやく熊の川温泉に到着。結局、1時間近く、約6000歩の旅だった。

 

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■泉温32度 日焼け肌癒やす

 

とにかく汗を流したい。古い建物が残る趣き深い町並みを抜けて「熊ノ川浴場」へ。なぜか料金が時間ごとに違うのだが、16時すぎだったので500円。300円チケットを渡し、差額200円を払う。熊の川温泉は弘法大師空海が全国行脚中に訪れ、水鳥が水浴びする様子を見て温泉を発見したと伝えられている。1924年の大水害までは嘉瀬川の河川敷で露天風呂的に築かれていた。

同浴場は川沿いにある。せせらぎの音を楽しみながら目を閉じると至福のひととき。泉温は約32度。古湯と比べてだいぶん冷たいのだが、そこそこなウォーキングをしてきた身としてはすごく気持ち良い。陽射しで火照った肌を優しく包んでくれる。源泉に浸っていると疲れがどんどん取れていく。これだけ長時間外にいると、普段ならひどい日焼けになるのだが、今回はまったく肌の赤みが出なかった。まさに温泉効果だ。

1時間くらいゆっくりしてしまったが、先客のみなさんはまだまだ湯船の中。もうちょっといたいが、バスの時間を考え風呂から上がる。着替えて館内を巡ると休憩所があった。嘉瀬川を見ながらゆっくりくつろげる、抜群のロケーション。ここなら何時間でも気持ちよく過ごせそうだ。屋外には飲料用の蛇口があり、入浴者は10リットルまで持ち帰り可能。番台の方に教えてもらいながらペットボトルに入れてみる。

 

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  最終バスまであと30分ちょっと。チケットは350円分残っている。最後に一杯!ということで近くにある「夢千鳥」へ。「湯上がりセット」は生ビールと枝豆に加え、から揚げ、ざる豆冨、揚げ出し豆冨の中から1種を選べて1000円(税別)。残念なことに生ビールと枝豆がなかったが、代わりのものを出してくれた。お腹一杯だったので、冷奴がありがたい。冷えた瓶ビールがなんとも体にしみる。

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最終バスは熊の川温泉を17時53分発車。ほろ酔い気分で旅を振り返りつつ、持ち帰った温泉水を飲んでみる。やわらかい口当たりで焼酎ロックに使ったら美味しそう‥。なんてことを考えながら、車窓から夕暮れの佐賀を眺める。歩いて、食べて、温泉に入って。「ぬる湯くつろぎきっぷ」でとことん満喫した休日だった。ちなみに体重は変わらず。まああれだけ食べて飲めばね‥。

=つづく?

 

▼取材終了後、筆者と担当Mさんとの会話

筆者「いやー、お散歩企画面白かったです。何度も行ったことある街なのに、歩くと見えてくる風景が違うというか」

担当M「結構、飲んでましたよね」

筆者「えっ‥お酒の量はそれほどでもないかと‥」

担当M「公共交通機関を使ったからこそ、という感じでよかったです」

筆者「あっ、そうですね。鉄道やバスで移動して散歩する最大のメリットは、汗をかいた後にお酒を飲めることかもしれません。この組み合わせで佐賀県内を全部周ったら楽しそうですね!」

担当M「周りますか」

筆者「えっ?」

担当M「県内20市町を公共交通機関で移動して散歩するコラムってどうでしょう?」

筆者「ええっ!(20もあるのか!) まあ、それは楽しそうですね。定期的に歩けばダイエットにもなりそうですし‥。うん、やりたいですね」

担当M「ただし来年3月末までに全部周ってください」

筆者「えええっ‥ それって毎週掲載くらいのペースになるんじゃないですか」

担当M「難しいですか?」

筆者「いや、なんとかなるとは思います‥けど」

だいたいこのようなやりとりの結果、当コラムの連載が決定。

          • 公共交通機関で現地まで移動
          • 歩く距離はだいたい2km
          • 来年3月末までに全20市町を散歩する

というのが基本ルール。とはいえ歩いたことがない地域も多い。そこで、いろんな人に情報提供をお願いしたいので、みなさんのインスタグラムの投稿を参考にしたいと思っています。通勤中や散歩しているときの何気ない風景を「#歩こう佐賀県」のハッシュタグをつけて投稿してください! また当コラムのインスタアカウント「burabura_saga」のフォローもよろしくお願いします!!! 急遽始まったこの企画、いったいどうなることやら‥。

 

その17 玄海編 港町で路地裏散歩 ひとり角打ちで時を忘れかける

中年男子が佐賀県全20市町をぶらぶら歩く連載の17回目は玄海町です。

      • 公共交通機関で現地まで移動
      • 歩く距離はだいたい5km
      • 2021年3月末までに全20市町を散歩する
      • 美味しいものをきちんと紹介する
      • お酒はほどほどなら大丈夫!
      • 基本はぶっつけ本番。面白いものに当たるまで歩くべし
      • 旬の風景を探そう

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今回は唐津に前泊。朝から豆腐料理を楽しむ。一応、魚ロッケを買い込み万全の体制で乗り込む。

唐津のバスセンターから「金の手」行きに乗車。良い名前だ。30分ほどで玄海町に入る。終点で下りる。

 

 

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さて、どこへ行こうか。久しぶりに会った横断歩道人形さんと相談。午後からは、前回行けなかった伊万里取材があるので、あんまり歩きすぎるとまずい。有田ー伊万里以上にシビアな移動が待っている。ひとまず国道204号を北へ行って、6000歩くらいで折り返すことにする。

河口に咲く桜はまさに満開。国道に入る。大きな道はつまんないかと思っていたが、きれいな花畑があたったり、畑を耕す人がいた。車で行くと見過ごしてしまいがちだが、ここにも生活があることを実感する。

 

 

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国道は仮屋湾の上を通っていく。平地はほとんどなく海に山が迫っている。急な斜面には山の上まで狭い棚田が重なっている。大きな道路橋に差し掛かる。

 

 

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とんでもないところに飛び出し注意の女の子が! バンジーをしているのか? 難易度高すぎ。

 

 

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道路橋から見る仮屋湾。海の向こうには納所の風車が見える。棚田には菜の花。こういう観光化されていない風景って素朴で心に沁みる。

道路脇にあったコンビニの案内板。あれっバス停から1km以上歩いてきたけど、お店は一軒もなかったよな?と思っていたら、小さく「金の手交差点より」と書いてあった。

 

 

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道路わきに芝桜が咲いていたので、覗いてみたら、崖下の民家から”侵食”していた。斜面の下では男性が庭仕事をしている。10年近く前に植えて、ここまでになったという。「雑草抜きが大変」とのこと。

少し歩くだけで風景が変わる。島と半島が複雑な風景を織りなしている。「不審者を見つけた人は110番通報!」の看板。国道をひとりで歩く中年男性は不審に見えないだろうか…。

そろそろ6000歩。大園バス停から集落に入り、海沿いの旧道で折り返す。

 

 

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集落の入口にあった大山祗神社。石段の幅が狭い。靴の半分くらいしかない。境内にはソテツが生えていた。海辺らしい植生だ。

石垣に囲まれた小道を下っていく。モルタルブロックで積んだ壁。組み方が珍しい。石材で作られた擁壁。石切場で加工されたような痕跡が面白い。

 

 

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道路橋の下にあった2棟の民家。瓦屋根が美しい。良く見ると鬼瓦の一部が青く彩色されている。波をイメージしているのか。

道路橋の下をくぐり、仮屋湾の方へ。橋脚には植物の根がびっしり。上に咲く桜と相まって、力強い風景を作り出している。

 

 

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おだやかな海。鳥の声が聞こえてくる。いちばん目立つのは鶯。というか他の鳥の声は分からない。花と鳥に詳しくなると、散歩は格段に楽しくなるだろう。

抜群のロケーションにある民家。こういうところで暮らすと人間丸くなるだろうな。もう10年もしたら、日がないちにち、海を見ながら干物を作って過ごしたい。読書しながらときどきひっくり返して、たまに味見と称して昼酒に…。

 

 

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港まで下りる。山の際に細い道があり、その両側に民家が密集している。狭い土地をなんとか利用して住宅を建てている。現在の建築基準法では基本的に建て直しができないからか、古い民家が残っている。碇なんかもあって港町の雰囲気を伝える。

奥行きが短すぎる家。1mくらいしかない。外壁の板は横貼りで青い瓦と相まってちょっと洋風というのも面白い。

 

 

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山裾には湧水? の水汲み場が2カ所あった。昔は貴重な水源だったのだろう。港へと伸びる細い路地の先には海が見える。

薄い石を重ねた階段。狭い土地をなんとか活用している。工夫が積み重なって生活感ある風景を生む。

猿田彦大神が祀られている。手前に「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿が置いてあった。2組あるのかと思ったが、なんとなく違和感…。よく見ると、前列右の像はただの体育座り。かなり巧妙な罠。気づいた自分を褒めたい。

 

 

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先に行くほど山は港に迫っていく。漁具が入った倉庫を挟んでもう海。土間に反射する光が美しい。そろそろ港に出よう。

 

 

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ちょっと休憩。海辺に座り海を眺める。2日前の有田編でもらったナチュラルワインをマイグラスに注ぐ。アテは唐津で買っておいた魚ロッケ。サックとした食感が堪らない。行き道でお店がなかったので、事前に用意しておいて正解だった。

 

 

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散歩再開。早め早めの行動を心懸ける。海辺の民家の戸袋に恵比須さんの鏝絵。カラフルだけど上から塗装しているみたい。本来の鏝絵なら色漆喰を使うので、こんな感じに剥げることはないと思う。

海にかかるプライベート橋。揺れそう。そして海を見ながら語らうおじいさんたち。一緒に酒を飲みたい。

漁港の入り口にあったカラフルな神様。よく見るとマツコデラックスに似てない? 月曜深夜の某冠番組に投稿したほうが良いかな?

 

 

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この辺りは飛び出し坊やが沢山出没する。子どもを大事にする姿勢が伝わる。写真1枚目はよく見ると飛び出し坊やが3体いる。これだけいると追いかけっこをしているようだ。写真2枚目には2体いる。

 

 

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酒屋が一軒あった。中を覗くと、角打ちができそうなカウンターがある。声を掛けると中からご主人が出てきた。コロナ対策で大人数の飲食は断っているそうだが、ひとりならOKとのこと。

地酒太閤のワンカップにつまみの煮干し。お会計はそろばんで計算。使うのを見たのは、今はなき、長崎の唐揚げ専門店「江戸善」の女将さん以来。お酒は飲み口が良く、ぐいぐい行ける。

ご主人は80歳すぎ。「寝るのが早くなって、夜中に眼が覚めるので絵を描いている」とのこと。女性の絵を店内に飾っていた。なかなかのタッチだ。一番目立つ位置にある「酒業報国」の額は、近くにあった酒蔵から、昭和28年の水害の後、貰い受けたという。

いつまでも聞いていたいのだが、本日はスケジュールがタイト。泣く泣く店を出る。もう1本くらい飲みたかった。

 

 

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先を急ぐが面白い倉庫があったのでちょっと止まる。写真では分かりにくいが、道路側から奥まですごくパースがかかっている。開口の高さは3mくらいありそうだが、奥は1.7mくらいになっている。元々、奥行があるのだが、実際以上に建物が長く見える。建築学生の作品にありそう。

 

 

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玄海海上温泉パレアに到着。ギリギリだが、なんとか温泉行けそう。いつもなら入ってしまうところなのだが、今回は早め早めの行動がテーマ。唐津に戻り筑肥線で伊万里へ向かう。8410歩、約6.4kmと適切な旅だった。

その2 武雄・山内編 展望台に謎の宇宙人?

宇宙人? 線路沿いをぶらぶらしてたらミステリアスな壁画に遭遇‥。急きょ始まった中年男子による企画「#歩こう佐賀県 全20市町制覇‼︎」。今回は武雄編です。ルールは

      • 公共交通機関で現地まで移動
      • 歩く距離はだいたい2km
      • 来年3月末までに全20市町を散歩する

の3つ。とりあえずJR佐世保線・三間坂駅からinstagram「burabura_saga」に写真をアップしつつ、ぶらぶらします。

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木造のなかなか趣のある駅舎を出て、なんとなく左へ。線路沿いの民家にはいろんな花が咲いている。それだけで歩くのが楽しくなるのが不思議だ。線路の土手に白いバケツが。「すてるゴミはこの中へ」。近くの住民が置いてくれたのかな? 遠慮することなく列車内でほぼほぼ飲み干したペットボトルを入れてみる。地域のみなさんの、この道に対する愛着を感じた。

 

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しばらく歩いたら小さな踏切が。せっかくなので反対側へ渡ってみる。片側2車線の道路沿いで目についたのは、横断歩道で安全を呼びかける女の子の人形。胴体に大きく明朝体で「あっちゃん」と書いてある。全国各地で見る人形だが、名前が書いてあるのは初めて。この子だけが「あっちゃん」なのか? なぜ「あっちゃん」なのか? いろいろ追求したい気分だか、とりあえずぶらぶらを続けよう。

 

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大きな道路を歩くのもアレなので、再び踏切を渡り、元々歩いていた線路沿いの道にも戻る。 10分ほど歩いたところで、なんとも魅力的なアンダーパスに遭遇! 人がギリギロ通れるくらいの高さの古い通路が線路の下にあった。これは渡らねば。外壁もいい感じに苔むしている。通路の先には、これまたいい感じのドライブインが。

 

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延々と有田方面へ向かう。普段、自動車で移動するときには、主に山沿いのバイパスを使うので、線路沿いの道はなんだか新鮮だ。佐賀県畜産試験場のあたりまで行くとだいたい1kmくらいになったので、引き返す。小さな踏切をわたる。「恩だら踏切」という名前らしい。そのまま引き返すのもアレなので、道中ずっと気になっていた丘の上の展望台に寄ってみることにする。

 

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線路沿いの道を5分くらい戻り、斜面に作られた急な階段をなんとか登ると、山内中央公園に出る。展望台があった。5階立てくらいかな。四方八方に伸びた展望スペースは鋭角になっていて、なんとなく旧ソ連のモニュメンタルな建築を連想させる。さっそく登って見る。途中で水で書かれたような、うっすらとした壁画を発見。後頭部の大きな二足歩行の生物が階段を登っているような図だ。宇宙人? いたずら描きにしては珍しいモチーフだ。よく見ると、水で描いているのではなく、コンクリートの塗装を削っているようだ。なかなかミステリアス‥。

 

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展望台の最上階で周囲の風景を堪能して、地上へ。駅の方に歩いていたら、良い感じの銅像を発見。毛利源三さんと杉原荒太さんの2人の像が並んで建っていた。裏側にある銘板で確認したところ、毛利さんは地元医療に貢献したお医者さんで、県議会議員も務めた人。杉原さんは元外交官で参議院議員だった人。こういう地元の人から尊敬されている人の銅像を見るのは楽しい。公園を下ると山内中の校庭になにやらインパクトのある像が。全身白塗りの少年?たちが肩を組んだりしながら、前向きに進んでいる感じ。もっとじっくり見てみたかったが、学校なので立ち入らず。想像だけで終わらせるというのも、これはこれで楽しい。 なんだかんだと1時間ちょっと歩いた。距離にして約3kmで約4000歩くらい。秋の風がここちよい街歩きでした。

 

▼取材終了後、筆者と担当Mさんとの会話

担当M「なんだか地味ですよね」

筆者「えっ‥まあ中年男子ですんで。華やかさにはかけちゃうとは思います」

担当M「美味しいものとか、綺麗なものなんかあると、みなさん喜ばれるのでは」

筆者「そう思って某レストランを取材したんですが、後日掲載を断られまして‥」

担当M「美味しかったんですか?」

筆者「そうりゃあもう! あのとんかつは県内最高峰でしたね! お酒のつまみもあったし。誰が行っても大満足ですよ」

担当M「‥でも書けないと仕方ないですね。今度からは美味しいものをきちんと紹介してください。あとお酒もほどほどなら大丈夫ですよ」

ということでこの連載に新たなルールを追加。

      • 公共交通機関で現地まで移動
      • 歩く距離はだいたい2km
      • 来年3月末までに全20市町を散歩する
      • 美味しいものをきちんと紹介する
      • お酒はほどほどなら大丈夫!

次回も乞うご期待!?

その18 伊万里編 映画の舞台 駒鳴駅からスタート。かめ公園でひとり花見

中年男子が佐賀県全20市町をぶらぶら歩く連載の18回目。伊万里市の駒鳴駅から大川野駅まで松浦川沿いを行く。

ルールは

      • 公共交通機関で現地まで移動
      • 歩く距離はだいたい5km
      • 2021年3月末までに全20市町を散歩する
      • 美味しいものをきちんと紹介する
      • お酒はほどほどなら大丈夫!
      • 基本はぶっつけ本番。面白いものに当たるまで歩くべし
      • 旬の風景を探そう

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唐津駅の1階にある、いかシュウマイのお店でゲソ天をゲット。用心のために缶ビールも仕入れておく。万全の体制でJR筑肥線の伊万里駅行の列車に乗車。車窓からは桜並木が見える。目的地の駒鳴駅に到着。

駒鳴駅を選んだのは一本の映画の舞台になったから。「家族ゲーム」や「メインテーマ」、「間宮兄弟」で知られる森田芳光監督の遺作となった2012年公開の「僕達急行 A列車で行こう」。主演は松山ケンイチと瑛太。鉄道好きという共通項で知り合った男性2人が、趣味を活かして仕事上のハードルを超えていく。しかしそのマニアぶりゆえに女性関係はうまく行かない…。「釣りバカ日誌」と「男はつらいよ」を足して”鉄分”を加えたような映画だ。主演の2人の最近見たことないようなキャラ立ちした演技や、ご都合主義的な展開は、映画全盛期に量産されたプログラムピクチャーへのオマージュと考えれば納得できる。いや、むしろシリーズ化を狙っていたのではないか。主人公がいろんな地方に転勤して、そこを走る鉄道を題材に、いろんな騒動を解決していく、みたいな。残念ながら森田監督の死去により続編は作られることはなかったが。

自らも”鉄オタ”である森田監督が、趣味全開の最初の一本の大事な舞台として、全国の駅の中からどうしてこの駅を選んだのだろうか。

 

 

 

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駒鳴駅の裏手には農地が広がっている。劇中では、この土地の持ち主である伊武雅刀とデベロッパー役の松山ケンイチが一緒にランニングする。この土地に食品工場を誘致するためだ。ちなみに、伊武はサッカー好きという設定でスペイン代表9番のユニホームをいつも着ている。背中にはフェルナンド・トーレスの文字。まさかその選手が同じ佐賀県にあるサガン鳥栖に来るとは。あのオジサンが実在したなら、きっと鳥栖スタジアムでトーレスとイニエスタの対決に感涙していたはず。

 

 

 

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駒鳴駅の反対側へ行く。たくさんのカメラマンが桜と列車の写真を取りに来ていた。古い井戸と桜の取り合わせが人気のようだ。

さてそろそろ歩きはじめよう。橋のたもとに大きな「架橋記念碑」があった。近くに釉薬瓦の集落が棟を寄せ合っている。

橋の欄干には苺とテナガエビの陶板があった。名産だろうか。苺は分かるけど、テナガエビ押しって面白い。

 

 

 

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県道38号を渡り、山裾の道を行く。ここの集落も釉薬瓦。基山編でも少し触れたのが、釉薬瓦は本州に多く、九州北部だと、冬に積雪するに日本海沿岸か山間部に限られる。ここは雪が深いのだろうか。

庭先にあった鬼瓦。こちらはいぶし瓦。きれいに手入れされた家庭菜園のチューリップも花盛りだった。

 

 

 

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伊万里といえば梨。この辺りは伊万里梨の産地のようだ。ちょうど白い花が咲いていた。某ラジオショッピングの音が流れる中、作業する人たち。収穫するのは秋に。思った以上の時間と手間がかかっている。果物の中で一番好きなのは梨。時期が来たらほぼ毎日食べる。秋になったら、この白い花を思い浮かべることだろう。

 

 

 

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道の途中に解説板。この山麓には戦国時代、日在城という山城があったという。その名残の土塁。このあたりは家臣が住む屋敷があったらしい。

釉薬瓦の家。赤と青。一派的な「いぶし瓦」は含水率が高く水分が染み込みやすい。「いぶし瓦」の中に入った水分は寒さで凍り体積が膨張、瓦が割れるケースがある。そのため、水を弾く目的で瓦の表面に釉薬をかける。

 

 

 

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松浦川の土手をのんびり歩く。金八先生のドラマのオープニングを見て、土手を歩いて登校するのに憧れてたなぁ。水面に光が反射してキラキラしている。河原も花盛りだ。

 

 

 

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県道28号に合流。道沿いに不思議な植栽空間があった。道路から見たら低木がもっさり繁殖しているように見えるが、中には通路には石のベンチが置いてある。公園なのだろうが、これだけ植栽の密度が高い空間は見たことない。しかも道路の側を結構な長さ続いていく。

 

 

 

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県道を下りたところにあった民家。石壁が美しい。印象的なデザインの玄関扉。こういうちょっとしたデザインの自由さは手仕事ならでは。ブロック造の蔵は角は削られていて、柔らかい印象になっている。これもまた手仕事。

 

 

 

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集落を歩く。石垣や、一見、教会のように見える農業倉庫など。釉薬瓦の装飾は鳩。これも規格品ではないと思う。装飾にはいろんな願いが込められている。商家なら商売繁盛を願い「打ち出の小槌」や「蝙蝠」。武家や民家では子孫繁栄を祈り「桃」とか。「鳩」にはどんな願いが込められているのか。まず思い浮かぶのは「平和」の象徴。壮大で良い。鳩はいつもつがいで行動するとされていて、子育ても一緒にするという。そういう意味では「夫婦円満」のメッセージかもしれない。

 

 

 

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大洪水記念碑。かつて発生した水害を忘れないために作られた。記念碑の地面から2mあたりの位置に線が刻まれている。ここまで浸水したということか。碑文が読み取りにくいが犠牲者らしき人名が残っていた。

正確な年が判別できなかったので、改めて調べたところ、昭和28年の豪雨被害によるものと分かった。前回、玄海編で酒屋さんに聞いた話と同じ水害だ!! こんなに離れた場所で被害を生んでいる。かなり大きな災害だったことが分かる。

 

 

 

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通り沿いの民家。欄間や床下の換気口の仕事が美しい。公民館の裏にはリサイクルステーション。きちんと分別されている。桜に誘われて細い路地を行く。小屋の屋根下の地面に水が落ちて模様ができていた。

 

 

 

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寄棟になっている煉瓦小屋カッコイイ。農業倉庫という感じではない。変電所のように、機械か何かが置かれていたのでは?

 

 

 

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大きな亀の遊具があるから「かめ公園」。桜満開だ。最近こういうコンクリート製がなくなってきた。鹿島で見たタコさんも使用禁止だった。安全性を考えて既製品を選ぶのも理解できる。でも、都会のデザイナーが頭で考えたものよりも、やっぱりこういう名も知らぬ職人さんのクリエイティビティが発揮されたオンリーワンのものが好きだな。

 

 

 

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実は結構、斜面が急な亀遊具。なんとか上って、ひとり花見。唐津駅で買ったビールとゲソ天を楽しむ。子ども達が遊んでいる。しばらくしてお母さんが迎えにきた。不審がられそうので、そそくさと撤収。

 

 

 

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モンドリアン的構成の建具。鮮やかに咲く紅白の桜。いい味のトタン。

 

 

 

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道沿いにあった病院。釉薬を塗ったスクラッチタイルと波ガラス。夕陽を受けてきらめいている。気が利く人ならオシャレ雑貨店にするな。

クラシックな美容院もあった。こちらはオシャレカフェかな。ハーブティーとか出したりして。

 

 

 

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先ほど歩いた日在城があった山系。こうして見ると日本昔話に出てきそうな山並みだ。

小さな踏切を渡る。「とまれみよ」の標語が良い。先に進むが行き止まり。戻って車道を進む。

JA敷地内にあった宮本岩見さんの銅像。この地区の農業振興に大きな貢献をしたという。踏切を戻り、大川野駅に到着。

 

 

 

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ちょうどのタイミングで列車がやってくる。単線のためホームで待ち合わせ。鏡像のような錯覚を覚える。唐津行きに乗る。7275歩。約5.5kmだった。一日合計は約12km。脚も痛くならず、ちょうど良い散歩だった。

▼取材終了後、筆者と担当Mさんとの会話

担当M「1日2本取材の2本目って薀蓄多めじゃないですか?」

筆者「えっ…」

担当M「ひょっとして取材が薄いとか」

筆者「そんなことないですよ! むしろ薀蓄の書くほうが調べ物大変なんですから」

担当M「走行距離はちょっと短くなりがちですよね」

筆者「むしろ1本目が歩きすぎてしまいがちなんです!せっかく歩いたから原稿にしたいじゃないですか。2本目の方が読み手にとっても良いバランスになっていると思います」

 さあいよいよ残り5日。あとは2市町のみ。3月末までに原稿は間に合うのか? 修羅場必死の次回、最終回です

その3 嬉野・塩田編 川の湊と酒と150円うどん

70中年男子が佐賀県全20市町をぶらぶら歩く、連載3回目は、いろいろあった結果、嬉野市の塩田宿を歩きます。

まずはルールの確認。

      • 公共交通機関で現地まで移動
      • 歩く距離はだいたい2km
      • 来年3月末までに全20市町を散歩する
      • 美味しいものをきちんと紹介する
      • お酒はほどほどなら大丈夫!

4つ。唐突ですが筆者は武雄市在住。今回は隣の市である多久方面に出向く予定。前日に現場までのルートをgoogle map で検索したところ、路線バスをおすすめしてきた。当初はJRを使うつもりだったが、それだと一旦、久保田駅まで向かい、そこから唐津線に乗り換えなければならない。バスなら1本で行ける。バスばんざい!

翌朝早めに出る。google map は自宅から目的地まで道案内してくれるから便利。10分ほど歩いて最寄りのバス停に到着してみると、結構大きな道路工事をしていて片側規制中。バス停には近づけない。仕方がないので交通整理の人に声を掛け、バスがきたら教えてもらえるように頼む。現場から離れたところでドラクエウォークをしながら待つ。ふと気がつくと予定の時間を過ぎている。渋滞かと構えていると、10分以上経つ。交通整理の人に確認してが、お目当の路線バスは通っていない、と教えてくれた。ちょっと心配になり、バス会社に連絡したら、定時運行中、と返事。普通の路線バスですよね? と確認したら、この時間はジャンボタクシーでの運行です、とのこと。それか!! 見逃す訳だ。自分のリサーチ不足を反省。次のバスは2時間後、自宅に戻るのもアレだし、明日出直すのも面倒臭い。駅前まで歩いて、最初に来たバスに飛び乗ろう。

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ということで「祐徳神社」行きに乗る。嬉野か鹿島のどこか適当なところで降りよう。バスは武雄市街を抜けて塩田方面へ行く。車窓からは雲仙普賢岳がみえる。これぞ秋晴れという見事な天気だ。塩田宿の手前で車道沿いに瓦屋根が連なる趣深い集落を発見。

 

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一番手前に「書店」の看板がある。「牛間田新道」バス停で降車。さっきの書店まで戻る。ショーウインドーに花が生けてある。店内は教科書や参考書が中心。このあたりの子どもたちのための品揃えだ。数軒隣には酒屋さんが。置いてある日本酒は塩田のお酒「東一」と「東長」のみ。ビールも数本だけという感じ。地元愛が伝わってくる。ちょうどいいサイズの日本酒を1本購入。車道から一本路地に入ると、稲刈りが終わった田んぼが広がる。藁積みにほっこりする。

 

集落を後にして鹿島方面へ。車道を歩いていたら、かなり三角な住宅があった。

 

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側面全部が急勾配の瓦屋根になっている。しばらく歩いていると横断歩道の脇に手を挙げた人形が。

 

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あれ?山内にもあったよな。胴体の名前は「みずきちゃん」。前回は確か「あっちゃん」だった。名前が違うのか。これは継続調査案件だ。

という感じで数十分歩くと、「塩田宿」に到着。車道の向こう側に

 

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「うどん150円」の看板が! まだ昼には早い。ちょっと散策してからにしよう。案内板でいろいろ確認。

 

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文化財級の建物が並ぶメインストリートに行かず、脇街道から入る。静かな街並みだ。路地に入ると、小さな水路の上を渡した薄い鉄板の橋があった。

 

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生活感が微笑ましい。山下小路を抜けて本通りへ。伝統的建造物群保存地区らしく立派な建物が並んでいる。いきなり気になったのは顔はめ看板。

 

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産業振興や教育などに貢献した塩田の10賢人のイラストが描かれている。唯一具体名がない「塩田の石工」が気になる。

 

大通りを嬉野方面に歩く。途中、案内板に誘われて脇道に入っていくのが楽しい。井戸の先にあった蔵の前には磁器がきれいに並べられていた。

 

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オブジェのような趣だが、元の用途はなんだろう? 良い佇まいの飲み屋さんも路地にひっそり建っていた。

 

通りの端まで来てしまった。引き返すのはつまらない。和洋折衷スタイルの消防団倉庫の脇の石段を登り、常在寺へ。

 

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そのまま丘をのぼり、学校の脇の坂ををえんえんと登る。途中、良い感じの擁壁があった。これも石工さんの仕事だろうか。峠を越えて下り坂に、メイン通りに戻る道に合流せず、あえてゲートボール場のわきを再び登る。頂上に行くと、尾根沿いにたくさんの墓がならんでいた。最初の案内板に書いてあった「塩田津の先達の墓地」って、ここのことか。有名無名関係なく「先達」と敬意を払う、塩田の人たちの気持ちが伝わってくる。樹木の陰からは瓦の連なり。その先に有明海がきらめいていた。

 

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本応寺の境内に下り、再び顔はめ看板の前。旧肥前陶土組合検量所を見学。

 

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案内板によると、塩田津では江戸時代から熊本・天草地方の陶石が船で荷揚げされていたという。塩田川上流の水車で陶土に加工され、有田などの陶磁器産地に運ばれていた。隣にある塩田津町並み交流集会所にはかつての塩田津を写した航空写真があった。

 

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川はS字に蛇行しており、鹿島側一帯は「遊水地」と描かれている。そういえば佐賀市の蓮池公園付近にも以前は大曲小曲という湾曲した水路があり、その南側が遊水地となっていた。これは佐賀が誇る江戸時代の治水神様・成富兵庫が、舟の航行に必要な水量を確保するために施した河川改良とされている。そういえば塩田は蓮池藩の飛び地領。「川の湊」という共通項ゆえに、この離れた土地を領有したかどうかは分からないが、佐賀を代表する2つの津(川の湊のこと)が、かつて同じような機能を持っており、どちらも現在、まっすぐな川として改修されているのは興味深い。

その19 神埼編 古代からの歴史残る町 回って回って回って回るぅうううー

中年男子が佐賀県全20市町をぶらぶら歩く連載の19回目は古代からの歴史が残る神埼町です。

ルールは

      • 公共交通機関で現地まで移動
      • 歩く距離はだいたい5km
      • 2021年3月末までに全20市町を散歩する
      • 美味しいものをきちんと紹介する
      • お酒はほどほどなら大丈夫!
      • 基本はぶっつけ本番。面白いものに当たるまで歩くべし
      • 旬の風景を探そう

朝目を覚ますと薄暗い。天気予報晴れだったのにハズレたかな。外を見ると空が霞んでいる。黄砂だった。こんな日に最後の2カ所取材しなくてはいけないなんて…

 

 

 

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神埼駅に到着。神埼なら「王仁博士顕彰公園」と「直鳥城」に行きたい。どちらも行くと約16kmになるので現実的ではない。連日の取材と執筆で体力的にも厳しいのでレンタサイクルを借りることにした。

駅北口の「吉野ケ里遊学館」に行く。が、どう見ても営業していない。営業日は事前に確認していたから休館日のはずはない。電話で問い合わせたところ、新しい神埼市役所の裏に移転したとのこと。南口を出て10分弱歩いて到着。ママチャリを借りる。まずは王仁博士顕彰公園へ。

 

 

 

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吉野ヶ里歴史公園の横の道路まで来て北上。農道をゆっくりと。古代官道が通っていた場所があった。今は農地となっているが、ここに幅8mの道路が近畿から通じていたという。

さらに先に行ったところで自転車がパンク!! やっぱり太りすぎなのかな。ちょっと落ち込む。連絡したところ、代わりの自転車を王仁博士顕彰公園まで持ってきてくれることに。そこまで1kmくらいまで押していきます。

道のはるか先には桜の森があった。それを目標に進むことで気持ちが軽くなる。ありがとう桜の森。

 

 

 

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王仁博士顕彰公園到着。広い駐車場がある出来たばかりの立派な公園。ほどなく代わりの自転車が到着した。同公園は古事記などによると、405年(応神16年)、朝鮮半島の百済から日本に漢字を伝えたとされる王仁(わに)博士を顕彰するもの。博士はこの辺りに上陸したとの伝承がある。

あいにくの休園日で展示施設は見れなかったが、公園は自由に入れた。百済門は木造。鬼瓦の上には烏帽子のようなものが乗っている。

中央のモニュメントの中心には博士の肖像画。あれっこの烏帽子は! さっきの鬼瓦のモチーフはこれか!!  「鬼瓦にメッセージを込める」というのは時代も場所も超えて共通なんだな。肖像画の両側には、博士が伝えたとされる漢字が陶板で展示されている。日韓両国の市民に書いてもらったようだ。政治家も担当しているのだがそれぞれの字の腕前が分かるのが怖い。

公園には子ども連れが何組か訪れていた。小学生くらいの男の子「ワニどこにいるの?」お母さん「動物のワニじゃないんだよ」男の子「ワニ食べられるの?」お母さん「食べられるんじゃないかな」男の子「毒ワニは?」。その後、男の子は自分の名前の漢字があるかお母さんと一緒に探していた。

 

 

 

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公園に隣接している「鰐神社」へ。先ほどの桜の森は、その境内だった。博士はここに上陸したらしい。鳥居の額には「鰐大明神」と書かれていた。桜の花びらがカーペットのように大地を飾っていた。

 

 

 

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拝殿の後ろにの祠。ほぼカエルに見える狛犬がかわいい。「王仁天満宮」と刻まれている。天満宮といえば菅原道真を祀る社。学問の神様とされる道真と、漢字を伝えた王仁博士を同じように崇拝しているということか。

 

 

 

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境内にあった郷土の偉人顕彰碑。今泉耕吉さんと松本勘三さんです。碑文が判読ないので人物像分からず。

 

 

 

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王仁博士顕彰公園に戻る。正面に見えるスペースには休憩用のベンチがたくさんあった。ジャッキーチェンの映画で武器になりそうなやつ。

 

 

 

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神埼駅方面へ戻る。お寺の門前にあった煉瓦倉庫。袖壁の上にブリキで覆いがあった。これは梁が腐るのを防ぐため。袖壁の上に梁が乗っかっている。

 

 

 

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煉瓦の使用率が高そうな集落を発見。ちらっと見えた壁に十字の穴があった。遠回りだが、見過ごすわけにはいかない。確認できそうなところに行くと、なかなかの出来栄え。いろんなアレンジがあるが十字が2段というのは見たことない。

 

 

 

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神埼駅周辺に戻る。「直鳥城跡」に行きたかったが、またパンクすると悪いので自転車返却。体重のせいではないと慰めてもらったが、タイヤに負担を掛けているのは間違いない。徒歩ならお酒飲めるし。

長崎街道沿いを目達原まで行くことに。櫛田神社の前を通る。博多山笠の櫛田さんの本家はこっち。平安時代末、神埼は平清盛の所領だったことから非常に栄えていたという。

通りにある洋風建築の銀行はギャラリーとして利用されている様子。土蔵造りの商家をリノベーションしたブティックもあった。

さらに進むと過去最大スケールのプライベート橋があった。水路や溝ではなく、川の上にある。ちょっと渡ってみたい。

 

 

 

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お腹が空いたところで、良い感じの町中華を発見。これまた土蔵造りの商家のリノベーションだ。建物の半分はバイク屋さんみたい。お母さんによれば創業50年くらいになるという。

 

 

 

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とりあえずビール。トクトクトク。やっぱり沁みますね。小瓶がちょうど良いが、最近はどこも置いてない。店内は落ち着いた雰囲気。先客が静かに新聞を読んでいた。「本日ランチ」の「白身魚の葱ソース」という中華らしからぬ響きに興味がそそられるが、ここは「ながさき焼きそば」にする。どういうものかちょっと謎。

 

 

 

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見た目は「皿うどん」。ちゃんぽん麺を使った、いはゆる「太麺皿うどん」のことだった。麺に付けた焦げ目が良い薫り。うまみも強すぎず丁度の塩梅。

メニューには他に「だる麺」というのがあり、ちゃんぽん麺の野菜あんかけ醤油味と書かれていた。気になる。

マンガ本の品揃えも信頼できる感じ。懐かしの「パイナップルアーミー」や定番の「ゴルゴ13」のほか、「本当にあったここだけの話 うっかり失言ハプニング」という一冊があった。

 

 

 

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通りを歩くと、そのほかにも古い建物をリノベーションした事例が眼につく。マンサード屋根みたいな昔の消防署ぽい建物を使った花屋さん。煉瓦倉庫のクレープ専門店など。

面白い家も多い。古い土蔵造りの商家に、新しい建物を強引にくっつけたもの。かつてあった屋根の漆喰仕事の一部が残っているのが良い。土蔵造りが2棟並行に連結している建物。その横の空き地にはモルタルブロックの門。アーチとその上部の装飾が良い。独特の空気感が漂う。

 

 

 

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町外れの和菓子屋さん。前を通っていたら自転車の小学生が入っていく。神埼の子どもは渋いなー。ちょっと気になったので中に入る。駄菓子ゾーンがあり、小学生のは目的はそっちだった。お土産用にいちご羊羹やひしぼうろなど買う。

 

 

 

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道なりに歩いていくと、お堂がある小さな丘が現れた。解説板によると「ひのはしら一里塚」というもので、徳川家康の命で、東京・日本橋を起点として全国の主要街道に一里(約4km)ごとに設置されたという。高い建物がなかった当時は、良い目印になっただろう。

 

 

 

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田手川にかかる広円橋を渡る。字面的に関西の大物歌手・円広志が頭に浮かんでいまい、頭の中はずっと「飛んで飛んで飛んで飛んで飛んでっ 回って回って回って回るぅうううー」というフレーズが無限ループ。まあ春っぽいので良いのだが。

吉野ヶ里編に続く。

その4 多久編 城下町の風格残る坂

城下町の風格残る坂道からスタートー。中年男子が佐賀県全20市町をぶらぶら歩く連載の4回目は多久聖廟周辺をさ迷います。ルールは

      • 公共交通機関で現地まで移動
      • 歩く距離はだいたい2km
      • 来年3月末までに全20市町を散歩する
      • 美味しいものをきちんと紹介する
      • お酒はほどほどなら大丈夫!
      • 基本はぶっつけ本番。面白いものに当たるまで歩くべし(スマホは基本禁止)

と、どんどん増えていく‥。前回の失敗 を踏まえ、午前9時半すぎ、最寄りのバス停で待ち構える。今後の連載スケジュールを考え、午前中、多久取材を終えたら、午後は唐津方面を攻めたい。 時刻表には「ジャンボタクシー」と記載。前回は見逃したのか、最近変わったのかは分からないが、これなら間違えない。

車は定刻どおり到着。車内に流れるFM放送が新鮮だ。車内には3人の乗客。途中、バス停を発進した直後に停車。運転手さんが降りて、通り過ぎた横断歩道へ走る。カートを押すおばあさんに声をかけ、車まで案内した。乗り遅れたおばあさんに気づいて迎えにいった模様。ジャンボタクシーならではの小回りの効いた対応だ。

 

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バスは北方から馬神峠を越え、30分くらいで多久市に入る。適当なところで降りる。「西町バス停」だった。とりあえず、多久聖廟方向に歩くとすぐに

 

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「西ノ原大明神」の看板。約1kmとある。とりあえず行ってみよう。 なだらかな坂が続く住宅街だ。

 

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しばらく歩くと神社らしき空間が見えた。境内に散った銀杏の葉が美しい。

 

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大明神かと思い、寄ってみるがどうも違うようだ。通り抜けて、来た坂道の逆に回ると鳥居があった。

 

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扁額に「天満宮」とあるので、こことは違うようだ。まだ上かな? ということで元の坂に戻り登っていく。 ここまで歩いて、ちょっと気付いたことがある。それは垣根がきれいな家が多いということ。